基層社会へ

現代中国の政治――「開発独裁」とそのゆくえ (岩波新書)

現代中国の政治――「開発独裁」とそのゆくえ (岩波新書)

唐亮『現代中国の政治』*1からメモ。


(前略)中国は専制政治の伝統が長く、官僚制のヒエラルキーがそれを支えてきたが、中央は県以下の基層社会に対し権力組織をつくることがなかった。明朝や清朝では、郷紳層と呼ばれる地元の文化人や引退した中小官僚、地主などの有力者らが国家と民衆とのパイプ役を務め、徴税や役務の提供などで国家の社会支配に協力しながら、国家に対して民衆の意見を代弁する役割を果たしてきた。
その伝統が新中国の成立によって大きく変わった。共産党はコミュニティ、つまり草の根のレベルでそうした自治の要素を取り除き、農村地域の郷鎮・村、都市部の街道・社区に対し行政組織と党組織を基層政権として設け、社会に対する直接支配に乗り出した。こうした基層政権は上級機関、とくに中央政府の方針に合わせて、経済や社会管理を行う。それによって、中国政府は政策の実施能力や社会統制の能力を著しく向上させた。(pp.14-15)
旧社会に関しては、〈宗族〉の自治ということが強調されるべきであろう。また、朝廷は皇帝の手先となって帝国を運営する官僚(科挙合格者)の供給を基層社会たる宗族の教育機能に依存していたといえる。
宗族の自治に関しては、上田信『伝統中国』*2をマークしておく。