Un très grand sociologue nous quitte. Bye Howard S. Becker (1928-2023) pic.twitter.com/hM6Alyn9kE
— Association Française de Sociologie (@afs_socio) 2023年8月17日
Wassila Belhacine “Mort d’Howard Becker, sociologue de la déviance” https://www.liberation.fr/idees-et-debats/mort-dhoward-becker-sociologue-de-la-deviance-20230817_2UK4FGZ2ZZFPNC3T5OFQX3626E/
社会学者のハワード・S・ベッカー氏*1。享年95歳。
著書『アウトサイダーズ』に結実する初期の「逸脱」研究は「逸脱」の社会学において、(大袈裟に言えば)デュルケーム以来の劃期的な仕事であったとされる。つまり、犯罪とか薬物使用といった所謂社会現象としての「逸脱」は、ベッカー以降、逸脱的な振る舞いをする主体の問題であるよりも、そうした振る舞いを「逸脱」として判断し、そのように扱う社会(及びその代理人)の問題であるということになった。「逸脱」は実体概念であることを止め、「レッテルを貼る(labeling)」という実践を起点とした社会的相互行為の産物であるというふうになった。社会学は(必然的に「逸脱」も含意する)規範についての学でもあるので、ベッカーの衝撃は、犯罪社会学や精神医療の社会学といった社会学の部分のみならず、社会学そのものへと及ぶべきものだった。社会的なスタンダード(主流)から外れた行為やアイデンティティへのマス・メディアや学者や一般人による言及というのは日々量産され、その都度「逸脱」が再生産されているわけだけど、そうした言説の質を判断する上で、それがベッカー以前的なのか/以後的なのかというのは、現在においても重要な基準なのでは?
私がベッカーの議論を知った1980年代前半、彼の知的関心は「アートの社会学」に移っていた。偶然”Arts and Crafts”という1978年の論文*2を読んだときに、この著者はあのレイベリング論の人と同一人物なの? とちょっと困惑したことを記憶している。私が無知であるに過ぎないかも知れないが、後期ベッカーの「アートの社会学」や「音楽社会学」はあまり注目されていないのではないだろうか。
*1:https://howardsbecker.com/ See eg. https://en.wikipedia.org/wiki/Howard_S._Becker See also https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20050819 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20070914/1189790820 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20090916/1253070929 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20100212/1265948020