「コケなのに菌類」

坂田歩美「身近な地衣類」『生命のにぎわいとつながり』(千葉県生物多様性センター)77、pp.1-3、2023


「地衣類」を巡って。


ウメノキゴケのように多くの地衣類の和名には語尾に「コケ」とついていますが、狭い意味でのコケの蘚苔類(コケ植物)とはまったく別の生物です。蘚苔類は細胞の中に葉緑体を含むことから維管束植物に比較的近い生物です。一方、地衣類の体の中を見てみると、菌類と藻類が見られます。菌類は藻類を乾燥から守ったり、藻類に水やミネラルを提供します。藻類はその水分やミネラルを使って光合成をして、生きていくために必要な栄養(糖アルコール)を作って、菌類に提供します。このように、地衣類は菌類と藻類が共生関係を結んだ複合生物です。
生きものの学名は1つの生物に対して1つ付いています。では、地衣類は菌類と藻類のどちらの学名で呼ばれているでしょうか。生物の学名をつけるルールの国際藻類・菌類・植物命名規約では、複合体を構成する菌類の学名で呼んでいます。地球上には地衣類が約2万種いるとされていますが、1600種以上が日本から記録されています。地衣類は現在でも、千葉県からもたくさんの地衣類の新種が発見されていますし、今後も新発見が期待できます。(p.2)
「ウメノキゴケ」というのはけっこう見るような気がする。苔というよりも黴のようで、木の幹に白い黴が生えているようだけど、どうなっているの? という感じ。勿論、地衣類には、オレンジの「ダイダイゴケ」や黄色い「ロウソクゴケ」もあるのだけど。