無知のうちに

Peter Hoskins*1 “Sri Lanka president asks Russia's Vladimir Putin for help to buy fuel” https://www.bbc.com/news/business-62073820


今年初めから スリランカの情勢は気になっていたのだけど、遂に大統領が国家の破産を宣言し、露西亜プーチンに石油の援助を乞うたとということが伝えられている。物不足とハイパーインフレーション、人民のデモとそれを弾圧する治安部隊。
ところで、私自身のスリランカに関する認識はかなり前からアップデイトされていなかったことに気づいた。勿論、2019年にはイスラーム主義者による無差別テロがあって、世界を震撼させた*2。日本に関連することだと、2021年に名古屋の入管でスリランカ人女性が殺されるということが起こっている*3。しかしながら、スリランカということでイメージするのは、いまだにシンハラ人(仏教徒)とタミル人(ヒンドゥー教徒)の凄惨な内戦*4である。スリランカにとって、大津波の被害を出したスマトラ沖地震は重要な出来事だったけれど、そのとき、内戦はまだ終息していなかった。スリランカの問題として、20年近くに亙って、スリランカの政治がマヒンダ・ラージャパクサ、ゴーターバヤ・ラージャパクサという兄弟及び親戚に牛耳られていることが指摘されていた*5。それを読んで、吃驚して、スリランカに関する自分の認識がアップデイトされていなかったことに気づいたのだった。
これは(自分にとっては)或る意味で皮肉なこと。1980年代のバブル経済の時代、印度哲学科の知人がスリランカに仏教遺跡見学ツアーに行った。その頃、日本でもスリランカ国内における凄惨なジェノサイドが報道されていた。(後に知ったことだけど)人類学者の上田紀行*6は農村でのフィールドワーク中にジェノサイドに遭遇するというトラウマ的体験をしていたのだった*7。それで、スリランカの状況、やばかったでしょう? と訊いたところ、何それ? と返されて、逆に吃驚したのだった。今度は、自分の無知に吃驚することになった。