Critical situations in Sri Lanka

承前*1

Keith Bradsher and Sandra E. Garcia “Local Group Is Blamed for Attacks, but Sri Lanka Suspects ‘International Network’” https://www.nytimes.com/2019/04/22/world/asia/national-thowheed-jamaath.html


スリランカ政府は21日の同時テロ事件の実行者はNational Thowheeth Jama’athであり、国外勢力が幇助していると発表した。National Thowheeth Jama’athは殆ど無名のイスラーム主義集団。但し、同グループを含め、誰も未だに犯行声明を出していない。


“The target selection and attack type make me very skeptical that this was carried out by a local group without any outside involvement,” said Amarnath Amarasingam, a specialist in Sri Lankan extremism at the Institute for Strategic Dialogue*2, a counterterrorism research group based in London. “There’s no reason for local extremist groups to attack churches, and little reason to attack tourists.”
内戦期のテロとの比較;

Sri Lanka, an island nation in the Indian Ocean, was ravaged by decades of civil war that ended in 2009, but it has little history of militant Islamist violence. The suicide bombings that were pioneered there starting in the 1980s were carried out by guerrillas from the country’s Tamil ethnic minority who were mainly Hindu, not Muslims.

Anne Speckhard, the director of the International Center for the Study of Violent Extremism*3, contrasted the attacks by Tamil guerrillas with those attributed to National Thowheeth Jama’ath. Unlike the bombings on Sunday, she said, those during the civil war were part of a nationalist or ethnic separatist movement, and generally did not have religious targets.

アルカイダやISISなどの国際的なジハード主義組織との関係;

Local ties with such groups may have been strengthened in recent years by Sri Lankan Muslims who traveled to fight in wars in Syria and Iraq, said Sameer Patil, a national security fellow at Gateway House, a foreign policy research group in Mumbai, India*4. With the Islamic State having recently lost its last patch of territory in Syria, he said, the group’s foreign fighters are now more likely to return home to Sri Lanka and other countries.

“It was just a matter of time before that would hit them on their own soil,” Mr. Patil said.

See also

Jason Burke “Sri Lanka bombings: doubts over Islamist group's potential role” https://www.theguardian.com/world/2019/apr/22/sri-lanka-bombings-islamist-group-blamed-but-focus-also-on-failure-of-security-forces


六辻彰二*5スリランカは「右傾化する世界の縮図」―ヘイトスピーチ規制の遅れが招いた非常事態宣言」https://news.yahoo.co.jp/byline/mutsujishoji/20180312-00082614/


上掲のNYTの記事の後半部とも重なるのだけど、スリランカにおける主流派仏教徒(シンハラ人)によるムスリム差別とムスリムの反撥。イースター・テロ以前(1年前)の文章。これについては不明を恥じます。


インド洋にうかぶスリランカでは、3月6日に政府が非常事態を宣言。同国では少数派ムスリムへの嫌がらせや襲撃を、当局がともすれば放置しがちであったことが、大規模な反ムスリム暴動とそれに続く非常事態宣言に行き着きました。いわば、スリランカヘイトスピーチを積極的に取り締まらなかったツケに直面しているといえます。
3月6日、中部州の複数の町で、ムスリムが多い地域を数百人のシンハラ人が襲撃。モスクや商店などが破壊・放火され、少なくとも一人が死亡しました。この事態に、スリランカ政府は10日間の非常事態を宣言。夜間外出が禁じられ、フェイスブックなどソーシャルメディアが遮断されました。しかし、その後もムスリムへの襲撃は続いています。

近年、サウジアラビアがインド洋一帯に進出するなか、スリランカもその対象となっています。2015年7月には、スリランカ経済特区にサウジがインフラ整備などで12億ドルを投資することで合意。こうした背景のもと、商業に携わることの多いムスリムは「経済的なチャンスに恵まれる」と嫉妬の対象となり、SNSなどで「富裕な湾岸諸国に出稼ぎに行ったムスリムが帰国後に豪華な家を建てた」といった噂が広がるようになりました(スリランカムスリム評議会の代表はこうした噂が「神話」に過ぎないと否定している)。

 さらに、厳格な政教一致を求めるワッハーブ派を国教とするサウジアラビアは、神学生の派遣や神学者の招聘を通じて、海外のムスリムに影響を広げてきました。その結果、以前は髪をスカーフで隠すだけのことが多かったスリランカムスリム女性の間にも、顔を全て覆うアラビア半島風のヒジャブが普及。さらに、スリランカから少なくとも32人が「イスラーム国」(IS)の外国人戦闘員としてシリアに渡航する事態となりました。

 この国で少数派のムスリムは、8世紀にこの地にイスラームを伝えたアラブ人商人たちの子孫といわれます。宗教や民族が混在することは、近代以前の多くの地域ではむしろ当たり前で、この地のムスリムも常に迫害されてきたわけではありません。しかし、サウジアラビアの進出と「純粋なイスラームの普及」にともない、「スリランカ社会の中心」を自認するシンハラ人の警戒感と嫉妬、憎悪は強まったのです。


その結果、スリランカではムスリムへの嫌がらせやヘイトスピーチが頻発。特に近年では、ミャンマーを追われたロヒンギャ難民の保護が、これを加熱させる一因となってきました。


ロヒンギャ問題とは何か:民主化後のミャンマーで変わったこと、変わらないこと*6


 その中心には、過激派仏教僧に率いられるボドゥ・バラ・セーナ(BBS)と、ナショナリスト組織マハソン・バラカヤがあります。このうちBBSは、ミャンマーロヒンギャ排斥を主導する過激派仏教僧の集まりであるミャンマー愛国協会とも結びついている一方、やはりムスリムを迫害するヒンドゥー教徒を支持者に抱えるインド政府にも「反ムスリム」の共闘を呼び掛けています。


「仏教のビン・ラディン」の説法禁止:ロヒンギャ問題の解決か、ミャンマーでの対テロ戦争の激化か*7

「仏教は暴力に結びつきにくい」のか:ロヒンギャ排斥を主導する仏教僧を突き動かすもの*8


 そこでは宗教の教義は大きな問題ではなく、仏教ナショナリストは「自分たちと異なる、気に入らない少数者」を排斥することを政治的な目標にしているといえます。これらの組織はSNSでのヘイトスピーチを通じて参加者を募り、これに呼応するシンハラ人による行為は徐々にエスカレート。2014年7月には首都コロンボの南にあるアルトゥガマのムスリム居住区を、BBSに扇動された数百人のシンハラ人が襲撃し、2人が死亡しました。


その後、スリランカ政府は取り締まりを強化。2017年11月には2014年の事件を扇動したBBSの幹部が、同国で初めて「ヘイトクライム」によって逮捕されました。これは、2014年の事件を受けて国連が具体的な改善策を求め、米国がビザ発給緩和の延期を通知するなど、国際的な批判が高まったことを受けてのものでした。

 しかし、スリランカ政府の取り締まりは、いわば「外部を納得させる」程度にとどまり、その後もヘイトスピーチや、それに扇動されたムスリム襲撃への取り締まりは事後的なものに終始しました。

 例えば、2017年11月に南部の港町ジントータにあるムスリム居住区を数百人のシンハラ人が襲撃し、数十軒の家屋と二つのモスクが破壊された事件で、警察は19人を逮捕。そのなかには、「ムスリムが仏教寺院を破壊しようとしている」というフェイク・メッセージを流布したシンハラ人も含まれていましたが、当局は襲撃以前にこれを取り締まりませんでした。

 同様に、3月6日の反ムスリム暴動の前日、ナショナリスト組織マハソン・バラカヤの指導者はディガーナの街中でSNSを通じて以下のように呼び掛けています。「この街はムスリムだけのものになっている。我々はもっと前からこれに取り組むべきだった。…ディガーナやその近くにシンハラ人がいれば、来てほしい」。こうした襲撃を示唆するメッセージが流れたにもかかわらず、6日に暴動の対象となった近隣の街にはわずかな警官や兵士しか配置されず、しかも彼らは暴動を制止しようとしなかったと報じられています。

Justin McCurry “Sri Lanka terrorist attacks among world's worst since 9/11” https://www.theguardian.com/world/2019/apr/22/sri-lanka-terrorist-attacks-among-worst-world-911


あくまでもamongなのだが、ワースト10には入る悲惨な出来事であることは間違いない。