占領下の音楽

広瀬登*1「占領下 音楽に何が出来るか」『毎日新聞』2022年4月2日


『抵抗と適応のポリトナリテ』の著者、田崎直美さんへのインタヴュー記事。
ナチス占領下の仏蘭西における音楽。


ドビュッシーラヴェルら、国際的評価を隔離していた過去の作曲家だけでなく、オネゲルメシアンといった当時存命だったフランスの作曲家の作品がたびたび演奏されたり、若手音楽家の失業対策の一環として積極的に新作が委嘱されたりした。「占領されrてはいるものの、音楽ではフランスはドイツに負けていないぞと見せつけ、自分たちのプレゼンスを高めようとしていました」と語る。

ユダヤ人であったがために迫害され、亡命を余儀なくされた音楽家もいた一方、日々の食いぶちを得るためにナチス直轄の「ラジオ・パリ」に出演する演奏家も少なくなかった。高名なピアニストのコルトーは占領中の臨時政府だったヴィシー政府の中枢に入り込み、その音楽政策に深く関わったが、ドイツへの頻繁な演奏旅行をしたことで、結果的に「独仏交流」の国内外への宣伝にも加担した。「音楽は、権力側に保護されるかわりに利用されもします」。その危うさも本書は教えてくれる。