Sexual?

David Moye “UK Tribunal Rules Calling A Man Bald Is Sexual Harassment” https://www.huffpost.com/entry/uk-tribunal-calling-man-bald-sexual-harassment_n_627ed4abe4b050d95191e2d5
Vicky McKeever “Calling a man bald counts as sexual harassment, UK judge rules” https://www.cnbc.com/2022/05/13/calling-a-man-bald-counts-as-sexual-harassment-uk-judge-rules.html
“Calling a man ‘bald’ is sexual harassment, employment tribunal rules” https://www.theguardian.com/world/2022/may/13/calling-a-man-bald-is-sexual-harassment-employment-tribunal-rules


上司にハゲ! と罵倒され、工場を解雇された男性の訴えに対して、英国の或る雇用裁判所は上司の行為を「セクシュアル・ハラスメント」と認定した。これは、女性の胸の大きさをいじることと等価なのだという。
確かに、ハゲ! と罵ることは「ハラスメント」なのだろうけど、それは「セクシュアル」なのだろうか? 
禿とセックスの関係や如何に?
本田和子さんの『少女浮遊』に曰く、


髪は、肉体の他の部分にもまして速やかに成長・増殖し、可視の形で代謝をくり返して、容易に外部の「もの」となる。すなわち、神経や内臓とは異なり、肉体の表層を覆って内と外の境界に位置しつつ、しばしば脱毛という形で身体から離れ、外在する異物と化して旧所有者にすらその外部性を際立たせる。成長の速やかさと所有者の意志を超えた増殖力のゆえに極めて生命的でもある毛髪は、その境界性のゆえに神秘さと不気味さでしるしづけられ、特別な意味を付与される。魔力や呪力など、しばしば超越的なものと結び付けられ、多くのタブーと関連させられるのもこの所以であろう。(pp.68-69)*1
本田先生によれば、「髪」の「速やかに成長・繁茂する特異性は、意志や理性と無縁の原初の生命力を表象」する(p.70)。これはフロイトが謂う意味でのエロスやリビドーと言い換えても大過ないだろう。仏教の僧侶の剃髪もこのような性的エネルギーの去勢を意味していると言える(Cf. エドマンド・リーチ『文化とコミュニケーション』*2)。では、髪の欠如である禿は「生命力」の欠如、或いは性的不能を意味してしまうのだろうか? そういうわけでもない。人間生物学的には、禿というのは男性ホルモンの過剰の結果であり*3、ここからすれば、禿は性的エネルギーの過剰、絶倫性を意味してしまう。AVでスキンヘッドの男優が使われることが少なくないのはこのことにも関係しているのだろうか。

こういうこともあったのだった*4


濵田理央「「豊田真由子議員のハゲ発言はヘイト」 早稲田大の非公認サークル「増門会」が抗議」https://www.huffingtonpost.jp/2017/06/22/toyoda-mayuko_n_17252158.html