論じられた金子兜太

持田叙子*1「豪快な前衛とユーモアに惚れる」『毎日新聞』2021年3月20日


井口時男金子兜太 俳句を生きた表現者』の書評。
少しコピペ。
金子兜太*2が位置づけられるべき文脈を巡って;


(前略)俳壇にとらわれない広い文化史の中で兜太が評される。六、七〇年代の岡本太郎の縄文アートや土俗文化を活用した寺山修司唐十郎石牟礼道子の巫女語りのエネルギーの流れに兜太を置く。ときに俵万智村上春樹の明るく軽い色彩を背景に塗る。
また、

最終章は傑作。兜太の野生のあかしとして彼に多いうんこ俳句を鑑賞する。晩年の代表句は「大頭の黒蟻西行の野糞」。地面をゆく黒アリ。目の前の巨大なうんこにびっくり。しかも旅の聖なる歌人西行の野うんこなのだ! 俳句つまり俳諧は昔から和歌が捨てた排泄の詩を愛した。そこにユーモアの泉を見いだした。兜太はずばぬけて日本古代のおおらかな笑いの文化を継ぐ、と唱える。早く明治に俳句の糞尿テーマを世界文学に負けぬと絶賛した永井荷風を思いだす。