嵐山



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「京都は、北国に半分めり込んだような街なのだ」というのは、宮脇俊三氏の『平安鎌倉史紀行』の一節ですが、確かに私の学生時代でも、伏見の竹田駅では晴天だったのに、地下鉄烏丸線に乗って今出川駅で降り、外へ出ると雪が舞っている…というのは、この時期にはよくあることでした。年が明ければ大学では後期試験が始まりますので、学生さんたちも大変だろうと思います。


白クマ

烏丸今出川あたりで雪が降っても積もってないのに、岩倉や修学院あたりでは真っ白ということもありました(笑)
そのあたりに下宿していた連中が帰るに帰れず、下京に住んでた友人宅に「避難」したり、当時は希少な終夜営業の喫茶店「からふね屋」で一夜を過ごしたりもしましたね。

京都内部の温度差ということだと、綿矢りさ*1『手のひらの京』で、「綾香」と「宮尾」が正月にデートで嵐山に行くシーンから;

(前略)
「あれっ、ぼく鼻水垂れれますか」
「そうですね。まあ、垂れていますね」
綾香は宮尾の鼻の下が透明な液体で濡れているのをちらっと見た。宮尾はあわててポケットから出したティッシュで、鼻の下をこする。
「寒すぎて感覚が麻痺してて全然気づかへんかった。さっき笑ったら、上唇になんか冷たいモンが触れたから、雪かなと思ったけど止んでるし」
「冬は寒すぎて、さらさらした鼻水が出ますよね」
「勤めだしてから京都に長く住んでるけど、こんなん初めてです。この辺りはよっぽど寒いんでしょうね」
「嵐山の辺りは特に寒いですからね、北の方やし、山も近いし。宮尾さんの家がある中心部とはだいぶ気温差あると思います」
”寒い”と発音すると余計寒くなり、濡れた足先が凍りそうだ。しんとした冷気は、雪が降っていなくてもみぞれが空気中に溶け込んでいるようで、骨身に染みる。
「はい。雪がこんなに積もってるのも初めて見た。うちの辺りは町の中心部のせいか、いくら降っても翌日には溶けてますから。こんな寒いのに鼻水垂らしながらずっと外にいてすみません。風邪引かはったら大変や。車に戻りましょう」
(後略)(pp.219-220)
京都の季節については、

京都に残暑なんてない、九月は夏真っ盛りと思っていた方が、精神的に楽である。京都の夏は六~九月、秋は十月だけ、十一~三月と冬で、四~五月が春。このくらいの気持ちでいてこそ、色々あきらめがついて長く暮らせる。過ごしやすい季節はごく短い。(p.99)
というパラグラフも。
手のひらの京 (新潮文庫)

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