或る復刊

先日、某本屋の店頭で、1980年に刊行されたアルフレッド・シュッツ『現象学的社会学』(紀伊國屋書店)が復刊されたことを知った。シカゴ大学出版局から上梓されたヘルムート・ワグナー編集によるシュッツ抜粋集の翻訳。これが刊行された当時、アルフレート・シュッツのテクストを日本語で読むことは殆ど不可能だった*1。これが出た後、Collected Papers2巻所収の論文を桜井厚氏が訳した『現象学的社会学の応用』という本がお茶の水書房から刊行され、さらに西原和久先生や那須壽先生による『著作集』の翻訳が刊行され始める。その時点で、紀伊國屋本の使命は終わったと思った。(管見の限りでは)実際、それ以降、この本が論文などでリファーされることはほぼなくなる。しかしながら、21世紀になって、少なからぬ復刊のリクエストが寄せられ、復刊の運びとなったわけだ。復刊を希望した人は何を思ったのか。こっちの方が重要な社会学的トピックかも知れない。

因みに、『現象学的社会学』は「社会学」ではなく「文化人類学」の本として世に出た。(多分)青木保先生*2の企画による「文化人類学叢書」の一冊として。