何故「リアル」か

佐和隆光「デジタル時代における読者家たちの苦悩」『経』(ダイヤモンド社)223、pp.24-27、2020*1


リアル書店ECサイト(ネット書店)かということで;


(前略)読書家は「本を手に取る愉しさを大事にしたい」(京都ジュンク堂書店*2のキャッチコピー)と考える。彼らが書店に出かけるのは、本を買うためではない。さまざまな本を手に取り、パラパラとページを繰ってみて「これは良くできた本だ」と評定を下したり、この本の装丁はよくできていると感心したりしながら、あれやこれやの本を手に取る愉しみを、心ゆくまで堪能するためである。つまり、本来の読書家は、欲しい本があってそれを書店に買いにゆくのではなく、1~2時間、書店に滞在し、書棚に並ぶ何冊もの本を手に取り、パラパラとページをめくり、これぞと思う掘り出し物を渉猟する。(p.25)
リアル書店が重要なのはそういうスノッブな目的のためだけではないだろう。佐和氏は「少なく主、買いたい本があらかじめ決まっておれば、書店に出かけるよりも、パソコンかスマホでECサイトに注文するほうが、費用と時間の節約という点で、だんぜん有利である」とも書いている(ibid.)。問題は「買いたい本」を「あらかじめ決」めるにはどうしたらいいのか、ということに関わっている。或いは、買う買わない以前に、世の中にどんな本が存在しているのかわからないという人にとって、リアル書店は重要な意味を持つ。世の中にどんな本が存在しているのかを大まかに直観的に知るには、或る程度の規模の本屋に行くのがいちばん手っ取り早い。何を買うのか選ぶのはそれからの話。