『不良少年』は未見

初恋・地獄篇 ≪HDニューマスター版≫ [DVD]

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ETV特集の「映画監督 羽仁進の世界 〜すべては“教室の子供たち”からはじまった〜」*1を視た。
『映画ナタリー』の記事;


羽仁進の革新性に迫るドキュメンタリー番組がNHKで放送、是枝裕和も出演
2020年5月7日 20:50 168


「映画監督 羽仁進の世界 ~すべては“教室の子供たち”からはじまった~」と題したETV特集が、5月9日にNHK Eテレで放送される。

1950年代から80年代にかけて、記録映画と劇映画を横断しながら数々の作品を発表した羽仁進*2 。実際に非行経験のある素人の少年をキャスティングした「不良少年」は、1961年のキネマ旬報ベスト・テンで日本映画の第1位に輝いた。

番組タイトルにもある「教室の子供たち」は、羽仁が岩波映画製作所の1本として1954年に監督したドキュメンタリー。授業を受ける小学生たちの生き生きとした姿をフィルムに収め、戦後日本のドキュメンタリーに革命を起こしたとも言われる作品だ。2019年10月に91歳となった羽仁。同番組では、彼に影響を受けたという是枝裕和とともに、羽仁作品の革新性に迫る。
https://natalie.mu/eiga/news/378116

とても面白かった。言及された作品は、『教室の子供たち』と『不良少年』のほか、『絵を描く子どもたち』と『初恋・地獄篇』。また、是枝裕和の解説のほか、『教室の子供たち』で助監督を務めた羽田澄子、『教室の子供たち』と『絵を描く子どもたち』でカメラを回した小村静夫、『不良少年』でカメラを回した金宇満司、『初恋・地獄篇』の主演女優、石井くに子、また、『教室の子供たち』や『絵を描く子どもたち』に出演した当時の小学生、『不良少年』に出演した当時の「不良少年」の証言。さらには、筒井武文による映画史的なコメンタリー。羽仁進の語りは映画以前の、羽仁五郎の息子として生まれた幼少期や(太平洋戦争と重なる)少年期にも及ぶ。そこで析出されるのは動物への親近性と「個」へのこだわり。
この番組を視たというMichikoという方、曰く、

「教室の子供たち」のリアリティー(ドキュメンタリーだからというのもあるけど)はまぶしすぎるくらいで、生き生きしていた。映像も子供も生きていた。なんという表情、空気感。面白いストーリーなどなくても、ずっと見ていられる。練習を何度もする、なんてしないよ~、そこで生まれるものを、と監督は言っていた。JAZZのインプロヴィゼーションみたいと思ったけど、JAZZはその場は即興でも知識や引き出しがたくさんいるからまた違うのかな?

でも本当の瞬間っていつも心がぶるぶる震えるものだ。子供のころ、喧嘩した友達に「さっきはごめんね」って、言葉にしたときは涙も一緒にでてきた。

話がそれたけど、そんな「監督的な目」でもっと人や世の中をおもしろがって、味わい楽しんで、愛して見れたらいいな。ちょっと変なやつがいると毛嫌いして心のシャッター閉める自分を反省。
(「羽仁進監督のテレビおもしろかった」https://note.com/michikonakamoto/n/n187c1490e814

この文章、番組とは関係ない部分が面白いのだけど、それはともかくとして、、『教室の子供たち』はゴダールトリュフォーヌーヴェル・ヴァーグを完全に先取りしていた。ヌーヴェル・ヴァーグの日本起源説というのは、半分は都市伝説なのだろうけど、それほど珍しい話ではない。ひとつは、中平康の『狂った果実』(原作は石原慎太郎)。もうひとつは、溝口健二の『新・平家物語*3。『教室の子供たち』や『絵を描く子どもたち』は海外でも評価された。ただ、1950年代に巴里のシネマテークで上映されたということはあったのだろうか。上映されていれば、そこに入り浸っていたゴダールトリュフォーが観た可能性はあるわけだけど。
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それから、『教室の子供たち』によって、現在私たちが考えている意味におけるドキュメンタリー映画というものが(少なくとも日本において)誕生したということが言える。それ以前の「記録映画」というのは、「記録映画」といいつつ、予め台本で用意された台詞をしゃべり、監督の指示に従って動作をするというものだった。ただ、そういう演技をするのはプロの役者ではなく、当事者だったわけだけど。今でもドキュメンタリー番組の「やらせ」が問題になり、批判の対象となることは屡々ある*4。そのとき、「やらせ」や仕込みなしのドキュメンタリーの歴史というのはそんなに古いものではないということが既に忘却されていることになる。それはともかくとして、羽仁進にそのようなブレイクスルーを可能にしたのは彼の「個」に対する敏感さだったと思う。
そういえば、羽仁進の映画は『教室の子供たち』と『初恋・地獄篇』しか観ていないことに気づく(汗)。たしか映画を観る前に『人間的映像論』という本を読んで感銘を受けて、それからと『初恋・地獄篇』を京橋のフィルムセンターで観て、さらにその後、何処かの公民館の上映会で『教室の子供たち』を観たのだった。『教室の子供たち』について;


Akihiko Kimura「オレは子供か!!『教室の子供たち』『絵を描く子供たち』2本立て:B+3」http://blog.livedoor.jp/basedonfacts/archives/68099141.html
ありの「教室の子供たち」http://arino2.blog31.fc2.com/blog-entry-836.html


『初恋・地獄篇』について;


尾形修一「「初恋・地獄篇」とその後-羽仁進の映画④」https://blog.goo.ne.jp/kurukuru2180/e/801c0ea6417b271d1e170c5a0821779a
ponnyman*5「初恋 地獄篇」https://ponyman.hatenablog.com/entry/20170608/1496906747