石井さんも吃驚だけど

大日方航「札幌の秀才中学生は、なぜ料理人を目指したか」https://this.kiji.is/626386998059467873?c=39546741839462401


札幌にある「アイヌ料理専門店」「ケラピリカ」のオーナー/シェフで「国内唯一のプロのアイヌ料理人」だという今博明さんの話。
彼が料理人を目指したそもそもの契機は中学教師の差別的な暴言だった。


 「アイヌは受験させないよ」。1983(昭和58)年、夏のある昼すぎ、札幌市内の市立中学校の狭い進路指導室だった。学習机を挟んだ向こうで進路指導の教員が放った一言。36年以上がたった今も忘れることはない。

 怒りも湧いてこなかった。ただぼうぜんとした。口を突いて出たのは「へぇ、そうなんや」。小学校時代を過ごした大阪で身に付いた関西弁だった。年上に敬語を使わなかったのは、後にも先にもこの時だけだ。

 勉強が大好きで、朝3時ごろまで机に向かうのが当たり前だった今さんの志望校は、北海道有数の進学校「函館ラ・サール」だった。模試の理数系科目は北海道で10位以内。学習塾では「体調を崩さなければまず受かる」と太鼓判を押されていた。

 だが、アイヌであるというただそのことだけで、願書すら出せなかった。

 あきらめが全身を襲い、学校への不信感が募る。受験勉強への意欲を失い、入試前日まで徹夜でマージャンに明け暮れた。「ばか校」と自嘲する高校に入学したものの、生活は漫然と過ぎていった。大学進学はせず、学歴に頼らない職に就こうと思っていたとき、父の勧めもあり、調理師になることを決めた。

いくらあの金子快之*1の故郷だとはいっても、これはあまりに酷いと思った。しかも、そんな大昔ではなく1980年代のことだ。まさか、「ラ・サール」が「アイヌ」の受験を拒否していたとも考えられないし、「アイヌは受験させないよ」というのが札幌の学校(教師)世界における自明な常識であったわけでもないだろう。あくまでも、それはひとりの教師の妄想であったと(無意識のうちに信じたくなる)。さて? また、この暴言教師はまだ存命している可能性もあるだろう。もし生きているとして、現在このことをどう思っているのだろうか。或いは、暴言を吐いたことを記憶しているのだろうか。