「除籍」余波

西日本新聞』の記事;


図書大量廃棄に村田喜代子さんら抗議 梅光学院大は「規定通り」
2020/3/17 6:00
西日本新聞 社会面


 山口県下関市梅光学院大図書館で大量の図書が廃棄されているとして16日、元客員教授で作家の村田喜代子さん*1や元教授らが連名で抗議声明を発表した。江戸時代の滝沢馬琴らの和本や学術誌、辞書など貴重な図書が処分されているとし、「貴重な本が明確な基準も手続きもないまま捨てられている」と訴えている。

 同市での記者会見で、同大元教授の安道百合子・大分大准教授は、今年1月の教授会で樋口紀子学長が「不要な書籍を処分する」と発言し、1月から2月にかけ大量の本が廃棄されたと主張。電子化されていない各大学の紀要や学術誌など7万~8万冊のほか、和本、辞書・事典類も処分されたと指摘している。

 日本近代文学研究者として著名な佐藤泰正元学長の蔵書も散逸しているとし、村田さんは「本は大学だけのものではない。長い時間の中で営々と集めた歴史が詰まっている」と憤った。

 一方、梅光学院大は、2003年に系列短大のキャンパス内に移転した際、大量の本が重複したと説明。現在約30万冊の蔵書があるが収蔵庫に限りがあり、今後図書館を改装し学習スペースを設けるため本の除籍(処分)を進めているといい、「運営会議と教授会を経て理事会で承認された学内規定にのっとって除籍している。一定期間図書館に並べ広報している」と反論する。処分対象は重複本や汚れた本などで貴重な本はないという。
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/592472/

また、『朝日新聞』の記事;

「大学蔵書を大量廃棄」 梅光学院に作家ら106人抗議
山田菜の花

2020年3月17日 10時15分


 梅光学院大(山口県下関市)が、専門家の評価を十分経ないまま、図書館の貴重な蔵書を大量に廃棄しているとして、文学者や研究者ら106人が16日、同大を運営する学校法人梅光学院側に対する抗議声明を発表した。

 抗議したのは「梅光学院大学図書館を守る会」。守る会によると、大学の研究論文や調査報告書を掲載した紀要などは7万~8万冊所蔵していたとみられるが、今年に入ってすべて廃棄されたとみられる。「廃棄の全容は把握できていない」としている。

 守る会には、同大客員教授だった芥川賞作家の村田喜代子さんや、作家の高橋源一郎さん、詩人の伊藤比呂美さんのほか、中原中也記念館の中原豊館長ら県内の文化人も名を連ねている。同会によると、2017年度に重複している蔵書の廃棄が増え始め、これまでに史料価値のある新聞縮刷版や辞書辞典類、図録、江戸後期に刷られた和古書などの廃棄を確認したという。

 この日、有志代表として記者会見に臨んだ村田さんは「本は大学だけのものではない。日本の歴史が詰まっている。電子書籍もあるが図書館という根本のところが紙で所蔵しないのは問題だ」と指摘した。中原館長も「文学、文化軽視が蔓延(まんえん)し、実はどこの大学でも起こっているのではないか。図書館は未来の読者への責任を負っており、無秩序な廃棄はやめるべきだ」と述べた。

 同大がホームページで公開している財産目録によると、19年3月末現在の図書は約36万冊。7年前より約2万5千冊減っている。学院側は16日、「抗議声明が届いたばかりで書籍1件1件については答えられない。司書の図書館長が専門知識に基づき、適正に除籍している」とコメントした。(山田菜の花)
https://www.asahi.com/articles/ASN3J72STN3JTZNB001.html

古書と古本というのは違うということを聞いたことがある。それによると、古書は文化財だが古本はそもそも紙資源である、と。梅光学院大学が「廃棄」したものの中には、例えば「江戸後期に刷られた和古書」とか、古本ならぬ古書がかなり混じっていそうだけど、大学側の認識としては古本にすぎなかったということになる。
最近の図書館を巡るトラブルというと、京都市教育委員会が寄贈された桑原武夫の蔵書を1人の職員の独断によって「廃棄」してしまった事件*2や、また土地と建物込みで尼崎市に寄贈された旧聖トマス大学の蔵書が宙づりになっている件もある*3