「英知」の遺産

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2020/1/22 11:35神戸新聞NEXT

大学寄贈の専門書どうする… 25万冊眠ったまま


 使い道はありませんか-。兵庫県尼崎市が昨秋にオープンさせた市立施設「アマブラリ」(同市若王寺2)で書籍類約25万冊が眠ったままになっている。2015年に廃止された旧聖トマス大学*1から、土地と建物ごと同市が無償で譲り受けた旧大学図書館の蔵書だが、一般への貸し出しに向かない専門書が多い上に、蔵書管理には多額の市税と要員を投じる必要がある。保管する市立中央図書館は「お手上げ」の状態だ。(大盛周平)

 アマブラリは旧聖トマス大の4階建て図書館棟を改修し、昨年10月に開設された。学習室や図書コーナーなどを備えているが、1階から4階まで連なる「立ち入り禁止」の閉架書庫には、同大の旧蔵書約24万8千冊が並ぶ。閉架書庫の延べ床面積は約500平方メートル。施設の約6分の1を占める。

 書庫には、日本の学術書や宗教書、海外文学の原書が収められ、中には300年以上前の洋書もある。同大図書館の司書だった同市立中央図書館臨時職員、中西真也さん(65)は「哲学や宗教学の本が体系的にそろっているのが特徴。ここの本があれば論文が書けます」と説明する。

 カトリック系4年制大学だった旧聖トマス大は、「英知大学」として1963(昭和38)年に開校。07年に改称され、学生数の減少などから15年に廃止された。学校法人は土地、建物を尼崎市に寄贈し、同市は跡地一帯を利用して青少年の支援施設を整備した。だが、当時の蔵書約25万8千冊は活用法が決まらなかった。

 管理を委ねられた市立中央図書館の担当者は、その中から一般に貸し出せそうな約2400冊を選び出し、市内2カ所の図書館で再利用。小中学校にも約3100冊を配布した。古くなった4500冊余りは処分したが、25万冊近い書籍は手付かずのまま残った。

 未整理の書籍は、市立中央図書館と北図書館などの全蔵書約75万5400冊に対し、3割を超す分量となる。担当者は蔵書の統合も考えたが、市の蔵書システムに登録するには、本のラミネート加工やバーコードの貼付などに1冊200~300円程度の費用がかかる。また、売却するにも専門性が高い書籍の価値が判断できず難しいという。

 現在は、希望があれば図書館職員が書庫を案内し、蔵書の一時的な貸し出しなどに対応している。同市立中央図書館の安福眞理子館長は、二つの市立図書館の一角に専用の本棚を置ければ「理想的」とするが、「その選別に果たして何年かかるか…。市民の税金をどこまで投入するのかという問題もある」と話す。


■生かされる方法考えて/笹倉剛・神戸親和女子大文学部教授(図書館学)の話

 蔵書は一冊一冊が財産で、特に古い文学系書籍は価値のある場合がある。知的財産をどう取り扱うのか、市が詰めておかなければいけなかった。ただ大学も含め、どの図書館も書庫がいっぱいで、本の引き取り手を探すのは難しい。湿度を保つなど管理も大変だ。責任の所在を明らかにし、有識者を集めるなどして本が生かされる方法を考える必要がある。
https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/202001/0013053394.shtml

思いついたのは、神戸から大阪にかけては、文系の大学も多いので、それらの大学の共同利用施設ということで参加大学を募って、諸費用を分担してもらうということ。