ゑびすの帰還

東北放送の記事;


津波で流失の恵比寿像 海底から引き揚げ
1/14(火) 19:38配信TBC東北放送


 津波で流失し行方が分からなくなっていた宮城県気仙沼市の恵比寿像が14日、海底から引き揚げられました。被災から8年10か月経つものの、幸い大きな損傷はなく、ほぼ原型を留めています。
 恵比寿像の引き揚げ作業は、気仙沼港そばの五十鈴神社前の内湾で行われました。像が見つかったのは、もともと設置されていた場所から25メートルほど西の海底で被災から約8年10か月ぶりに姿を現しました。この恵比寿像、大漁祈願や航海の安全を祈って、1932年に初代が建てられましたが、戦時下の1943年に金属回収のため接収されます。2代目は1988年に建立されましたが、東日本大震災津波で流失し、行方が分からなくなっていました。ようやく発見されたのは2019年11月のことで、復旧工事の関係者が水深3メートルの海底に沈んでいるのを見つけました。タイを抱えた高さ1.5メートルの銅製の立像に大きな損傷はなく、関係者は安堵しています。
 地元では、3代目の恵比寿像の建立準備が進められていますが、14日に引き揚げられた2代目も今後、神社の境内で安置されることになっています。気仙沼港は2019年、サンマやサケが記録的不漁となっていただけに漁業関係者は恵比寿像引き揚げのご利益に期待を寄せています。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200114-00000009-tbcv-l04

また、『河北新報』の記事;

津波流失のえびす像、海から引き揚げ 住民再開喜ぶ・気仙沼
1/15(水) 10:00配信河北新報


 東日本大震災津波で流失し、昨年見つかった宮城県気仙沼市魚町の神明崎のえびす像(高さ約1.5メートル)が14日、海底から引き揚げられた。地元の住民たちは、大漁を願うシンボルとの約8年10ヵ月ぶりの「再会」を喜んだ。

 3月に完成予定の遊歩道などの工事作業員が、クレーン車を使って市内の岸壁近くで引き揚げた。像はタイを釣り上げる立ち姿。ほぼ元の状態を保っていた。右手に持った釣りざおは折れていたが、近くで見つかった。

 像は1988年の建立。32年に建てられた初代像が太平洋戦争で軍に金属として回収されたため、神明崎にある五十鈴神社*1の氏子らが協力して復活させた。

 震災の津波で流され、漁業関係者が周辺を捜したが見つからなかった。昨年11月下旬、工事の作業員が発見した。

 五十鈴神社の神山正志宮司(70)は「元の形のままで戻ってきてくれた。海の守り神が見つかり、本当にうれしい」と喜んだ。

 2017年夏に商工、漁業関係者らが「3代目えびす像建立委員会」を設立し、今春にはカツオを釣り上げる3代目ができる。委員会は今回見つかった像を五十鈴神社に奉納する予定。

 委員長を務める気仙沼商工会議所の臼井賢志名誉会頭(77)は「元気な姿で戻ってきてくれた。今年の大漁につながり、気仙沼の復興にも弾みがつくはずだ」と話した。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200115-00000005-khks-soci

ところで、水死体をヱビスと呼んで祀る地域もある*2。このゑびすさんは海から引き揚げられたという意味では文字通りゑびす。しかし、水死せずに生還したという意味ではゑびすではない。

*1:See eg. 「五十鈴神社」https://genbu.net/data/mutu/isuzu_title.htm https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%94%E5%8D%81%E9%88%B4%E7%A5%9E%E7%A4%BE_(%E6%B0%97%E4%BB%99%E6%B2%BC%E5%B8%82)

*2:See 波平恵美子「水死体をエビス神として祀る信仰:その意味と解釈」『民族学研究』42-4、pp.334-355 Also 「壱岐島/唐人神(エビスの一面)」http://www.y-tohara.com/iki-toujinkami.html 鳥飼かおる「漁業では水死体(エビス)に出会うと大漁をもたらすものと信じられていた」https://www.sougiya.biz/kiji_detail.php?cid=732