幾つかの謎

偶々以下の記事を読んだ;


黒沢永紀「日本橋の外れにひっそり 都内で唯一ドクロを祭る神社「高尾稲荷神社」とは」https://blog.goo.ne.jp/y0sh1dac1c2f1f2/e/8ba167d835246481d0875ac0cedcb10e


日本橋箱崎町にある「高尾稲荷神社」*1について。花魁二代目高尾太夫の頭蓋骨を「御神体」として祀るという。二代目高尾太夫は実際には結核*2で亡くなった。しかし、フィクション(歌舞伎の『伽羅先代萩』)によれば、仙台藩伊達綱宗を袖にしたために斬殺され、その遺体を隅田川に捨てられたことになっている*3。捨てられた遺体が流れ着いたのが、日本橋箱崎町で、「高尾稲荷神社」はそこに鎮座している。つまり、フィクションに基づき、フィクショナルな由来の地に現実の祠がある。じゃあ、橿原神宮なんてどうよ? と言われるかもしれない。しかし、こちらは数十年前の出来事、(当時にとっての)現代史が問題になっている。さらに、たんに高尾太夫の頭蓋骨が「御神体」であるだけでなく、彼女の霊である「高尾大明神」が祭神であるらしいのだ。まあ「高尾大明神」という神仏習合を前提とした神名が明治以降の神仏分離体制の中で通用したわけないだろうとは思う。また、「稲荷」といっても稲荷神が祀られているのかどうかも定かではない。写真とかを見ても、狐とか油揚げといった所謂〈稲荷〉的なものは見当たらない*4
いくらあちゃらかな殿様だったとはいえ、伊達綱宗はとんだ冤罪だったということになる。仙台人にとっては、反仙台的な場所のブラック・リストに入っているのかも知れない。

*1:See eg. 「高尾稲荷神社|仙台藩伊達綱宗候に切り殺された遊女高尾太夫が引き揚げられた当地」https://tesshow.jp/chuo/shrine_hakozaki_takao.html日本橋箱崎 高尾稲荷神社を参拝」https://blog.goo.ne.jp/y0sh1dac1c2f1f2/e/8ba167d835246481d0875ac0cedcb10e

*2:労咳と表現した方が時代劇っぽいだろうか。

*3:See 滅紫「江戸のパワースポット 頭痛平癒に「高尾稲荷の社」」https://tokuhain.chuo-kanko.or.jp/detail.php?id=576 芳村直樹「高尾太夫 2 高尾の吊し斬り」https://ameblo.jp/manhattan1980/entry-11827750645.html

*4:因みに、四谷や新川の「於岩稲荷」の祭神は「豊受比売大神」と「田宮於岩命」。See 「四谷於岩稲荷田宮神社」https://jinja.tokyolovers.jp/tokyo/shinjuku/yotsuya-oiwainaritamiyajinja 「於岩稲荷田宮神社|四谷怪談のお岩を祀るため、芝居小屋に近い当地に創建」https://tesshow.jp/chuo/shrine_shinkawa_oiwa.html