オランウータンに近く

Helen Briggs*1 “Secrets of the largest ape that ever lived” https://www.bbc.com/news/science-environment-50409541
Katie Hunt “'Real King Kong' primate was related to the orangutan” https://edition.cnn.com/2019/11/13/world/ancient-ape-linked-to-orangutan-scn/index.html
Gretchen Vogel “‘Dragon teeth’ reveal ancient ape’s place in primate family tree” https://www.sciencemag.org/news/2019/11/dragon-teeth-reveal-ancient-ape-s-place-ancient-primate-family-tree


かつて中国南方からインドシナにかけて棲息していた、「最大の類人猿」といわれるGigantopithecus blacki*2。身長3メ米、体重は(ゴリラの2倍の)600kgに及んだと推測され、約30万年前に絶滅したという。Gigantopithecus blackiの全身の化石どころか完全な頭蓋骨も発見されておらず、現在までに見つかっているのは4人分の顎骨と数千本の歯のみ。コペンハーゲン大学のEnrico Cappellini氏*3やFrido Welker氏*4などが中国南方の洞窟で発見された顎骨を分析したところ、Gigantopithecus blackiがオランウータン*5の近縁であることがわかった。(ホモ・サピエンスを除けば)オランウータンは現在亜細亜に棲息する唯一の類人猿であることから、これはすんなりと納得できる。というか、多くの人が薄々と直感していたことを科学的に言うためには、これだけの手続き或いはテマとヒマが要請されるということ。なお、進化の系統においてオランウータンに近いとは言っても、直ちにオランウータンに似ているとは言えない。
映画の『キング・コング』とGigantopithecus blackiとの関係は詳らかではない*6。ただ、2016年にディズニーがリメイクした『ジャングル・ブック』のKing LouieはGigantopithecus blackiからインスパイアされたものである。

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ところで、このGigantopithecus blackiの化石は1935年に和蘭の古生物学者Gustav Heinrich Ralph von Koenigswald*7が香港その他の漢方薬屋で初めて発見した。「龍牙(dragon teeth)」として売られていた。多くの人が甲骨文字の発見を想起するのではないだろうか(Cf.eg. 薮内清『歴史はいつ始まったか 年代学入門』))。
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