女性、非東大生、新入生

承前*1

山口岳大「東大入学式2019・上野祝辞アンケート分析① 回答傾向の分析から」http://www.todaishimbun.org/entrance_ceremony_speech20190528-1/


曰く、


4月12日の学部入学式で上野千鶴子名誉教授が述べた祝辞*2は、学内のジェンダー問題や大学で学ぶ心構えを説き、学内外で反響を呼んだ。東京大学新聞社は、この祝辞について東大内外の全ての人を対象にアンケート調査を行い、東大生(院生含む)603人を含む4921人から回答を得た。東大生以外では87.5%が祝辞を評価した一方、評価した東大生は61.7%にとどまり、祝辞への反応の差が浮き彫りになった。東大生の中でも、性別や学年、文系理系によって回答の傾向に相違が見られた。

東大生については、男性に比べ女性の方が、全学生に占める回答者の割合が高く、祝辞を肯定的に捉える傾向が顕著だった。さらに、学内のジェンダー問題にもより強い関心を持っていることが示された。女性はこの問題においてマイノリティーの立場にあり、祝辞の問題提起をより切実に捉えていたことがうかがえる。


新入生と学部2年生以上の学生で比較したところ、新入生の学内の問題への認識度が相対的に低かった。このことから、今回の祝辞は、新入生が東大内の問題を知る機会として大きな役割を担ったということができる。学生の男女比は容易に認識できるものの、東大の女性が入れないサークルは今回の祝辞によって初めて問題として認識された可能性がある他、2016年の集団強制わいせつ事件は今後風化する恐れもあった。さらに、研究職・管理職における男女比率の偏りは、他の問題と比べると学生には身近でなく、この問題については、新入生に限らず学生全体にとって新たな問題提起となったと考えられる。

 学部2年生以上の方が新入生に比べ祝辞への評価が低いことも明らかになった。ここで学部2年生以上が批判を向けたのは、祝辞の主張それ自体よりもむしろ、周辺的な事柄に対してだった。まず、主張を裏付ける根拠が必ずしも説得力を持っていなかった点が槍玉に挙げられることが多かった。祝辞冒頭で触れられた、理Ⅲにおける女子学生の合格率に対する男子学生の合格率1.03倍は統計的に意味を持たないのではないか。他の大学との合コンで東大の男子学生がもてるというのは必ずしも正しくないのではないか。祝辞の趣旨を認めつつも、こうした議論の弱さを指摘する声が多かった。さらに、内容の正否や意義とは別に、それが入学生が祝われるべき「祝辞」という枠組みで捉えられる限りでは評価できない、という意見も多数あった。

 東大生以外は、全体的に東大生よりも祝辞を肯定的に捉える傾向があった。東大生の女性も祝辞を評価しているが、東大生以外の女性はさらに高く評価しており、男性の場合も、3人に1人が祝辞を評価していない東大生の男性と比較すると、かなり高い評価を下している。この違いは、東大生以外の中で多数を占めた社会人の方が、社会での経験が豊富であり、問題がいかに深刻であるかを目の当たりにしてきたことに起因していると考えられる。これは、東大生を除いた集団の中で、10代、20代の若い世代よりそれ以上の世代の方が祝辞を評価している割合が高いことからも裏付けられる。

See also


「性差別に触れた上野千鶴子さんの祝辞 東大生6割強が「評価」」https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190528/k10011932391000.html


また、


山口岳大「東大入学式2019・上野祝辞アンケート分析② 回答理由の記述から」http://www.todaishimbun.org/entrance_ceremony_speech20190528-2/


奥村隆氏*3曰く、


上野千鶴子さんの祝辞を「たいへん評価する」「評価する」と回答した東大生は、女性は82.2%。男性は53.1%。だからこそ、あの場で述べる意味があったと言えそうです。
https://twitter.com/okumurata/status/1133262530590138368