いい/悪い?

承前*1

慶應義塾大学「広告学研究会」レイプ事件だが、悪い「広研」といい「広研」とを分けて、後者に同情してみせるという報道の傾向が現れたようだ。
スポニチ』の記事;


慶大集団暴行疑惑はオラオラ系学生 ミスコン担当とは「別動隊」
2016年10月17日 7時0分

スポニチアネックス


 男子学生が女子学生に集団暴行した疑惑がある慶大「広告学研究会(広研)」について、問題を起こしたのは「ミス慶応コンテスト」を担当する学生ではなく、“オラオラ系”の別動隊だったことが16日、分かった。女子学生側の被害届を警察が受理し、捜査を始めている。

 関係者によると、広研はその名の通り広告に関する研究を行う団体。その一環として「ミス慶応」の運営を行っていたが、一方で全く異なる活動を行う「別動隊」と呼ばれる学生たちがいる。9月2日の暴行疑惑の現場にいたのは全員が別動隊の1年生だった。

 別動隊の主な活動は神奈川県葉山町にある海の家の運営。シーズン終了の解体撤去作業は毎年1年生が担当。作業後に合宿所に泊まって打ち上げとして飲み会をする学生もおり、今年は男子学生6人が参加。そこに女子学生1人が呼ばれた。

 昨年、海の家で撮られた広研の記念写真には、いかつい風貌をした学生が足を組んだり股を開いたりして写っている。

 学内での広研のイメージはまさにこの写真の通り。「飲み会がメインの団体でオラオラ系。酔ったら大変なことになる」という不評が広がったことで、会員の人数がどんどん減った。10年ほど前に広研で活動したOBは「自分たちの時は100人ほどいたけど、今は半減している」と話した。写真に写っていたのは33人。結果、暴行疑惑の当日の飲み会に集まる人数も減り、女子学生は1人だけだった。入学して5カ月足らずで飲酒してはいけない年齢がいるはずの新入生だけがおり、監督する上級生がいない状況だった。

 一方で「ミス慶応」の運営をしていたのは、広研の1924年(大13)から続く92年の歴史を継承し活動していた学生たち。別動隊の人数が多くなる中で現在は少数派だ。ファイナリスト6人も決まっていた「ミス慶応」が別動隊の不祥事で中止になり、学内からは同情の声も上がる。他の公認団体の有志も手を挙げ、開催を訴えたが、大学側は認めなかった。削除されたミス慶応コンテスト2016のツイッターでも「今年度ミス慶応コンテストは、いかなる団体を通じても開催する予定は一切ございません」とされていた。

 ◆オラオラ系 「短髪」「黒髪」「肌はしっかり焼く」というスタイルで、黒とシルバーのハイブランドのアクセサリーを基調とした不良っぽいファッションをする人を呼ぶ。また、見た目や言動で“男”を前面に打ち出し、常に強気で自己中心的なタイプを指す場合もある。
http://news.livedoor.com/article/detail/12155374/

「別動隊」のこういう使い方ってありなのだろうか。「別動隊」というのは、普通、表面的には無関係を装っている(無関係ということになっている)けれど裏ではしっかり繋がってるんじゃないかというときに使うのでは? 大阪維新自民党の別動隊だ、とか。ちょっと前に流行った言葉だと、〈ステマ*2というのは大体「別動隊」の仕業ではなかったか。
ここで示されているのは、「広告学研究会」には〈いい子〉(「ミスコン」系)と〈悪い子〉(「海の家」系)があって、前者は後者の暴走の被害者であるという構図。でも、清和会だろうが宏池会だろうが自民党に変わりはないだろうということもいえる。「広告学研究会」として統一した単一の代表を選出し、統一の会計を行っていたわけでしょ?
また、『夕刊フジ』の記事;

ミス慶応」主催サークル、学内でも悪評「チャラい」
2016年10月17日 17時12分

ZAKZAK夕刊フジ



 「ミス慶応コンテスト」を主催する慶応大の「広告学研究会」(広研)で、男子学生が集団で女子学生を強姦した疑いがあるとして警察が捜査に入る事態となった。実はこの広研、以前から学内で芳しくない評判もあり、入学時に関わらないよう注意されたという学生もいた。多くの女子アナウンサーを輩出する学生団体の裏の顔−。

 暴行を受けた女子学生側は9月上旬、神奈川県警葉山署に相談。問題が発生したのは葉山町にある施設だった。大学関係者によれば広研は毎年夏、この町で海の家を出していた。

 加害者の1年生男子が籍を置いているという日吉キャンパス(横浜市港北区)。講義を終えて出てきた2年の男子学生(20)は「広研には、ミスコンを担当するグループと、海の家を運営するグループがある。問題を起こしたのは海の家の人間たちです。真面目にミスコンの準備をしていた広研の友人は、彼らのせいで中止に追い込まれてムチャクチャ怒ってますよ」と話す。

 その海の家を担当する一部の人間のために、広研そのもののイメージも良くなかった。別の2年の男子学生(20)は「とにかく、酒を飲んでいるだけでは終わらないという感じ。セックス目的で近づく男子? いたと思います。新歓(新入生歓迎)のとき、関わらない方がいいと上級生から言われました」と振り返る。

 広研についての学生の評価の多くは「チャラい」というもの。一方、理工学部2年の男子学生(20)は「広研は就職の面倒もみてくれたらしい。メンバー募集も盛んで、全体で200人以上はいたのではないでしょうか」と話す。

 広研に友人を持つ前述の男子学生は「ミスコンは楽しみにしていたし、歴史ある団体がなくなるのは残念です。問題を起こした学生は、当然自ら大学から去るべきですよ」と憤った。

 一部学生の暴走で慶大ブランドも大きく傷ついた。マジメな学生はたまったものではない。
http://news.livedoor.com/article/detail/12157891/

勿論、〈いい子〉には同情したくなるというのも事実だ。
再び『スポニチ』の記事;

揺れる慶大“動画”の存在知っていた 男子学生ら普通に登校!?
2016年10月18日 8時49分


スポニチアネックス
 「ミス慶応コンテスト」を運営する慶大「広告学研究会(広研)」の男子学生が女子学生に集団暴行した疑いがある問題で、現場で撮影したとされる動画の存在を大学側が把握していたことが17日、分かった。

 スポニチ本紙の取材に、慶大広報室は「男子学生らは、撮影した動画などは消去したと説明していた」と話した。このため動画の内容は「確認していない」という。本紙が問題とされる動画の一部を確認したところ、性行為をする全裸の女子学生と男子学生2人が映っていた。

 学内では動画の一部が出回り始めている。今回の撮影行為はリベンジポルノ防止法違反や、名誉毀損(きそん)に問われる可能性が指摘されている。広研関係者によると、暴行疑惑は9月2日、神奈川県葉山町で起きた。同町で広研の別動隊が海の家運営を主な活動とし、毎年1年生がシーズン終了の解体撤去作業を担当している。作業後に合宿所で飲み会を開くことも多く、今年は男子学生6人が参加。女子学生1人が呼ばれていた。

 大学では、これまで関係する学生を複数回にわたって聴取。「性行為は把握していたが、刑事事件につながる事実までは確認できなかった」とし、現在は神奈川県警の捜査を見守っている。慶大生によると「男子学生も女子学生も、騒動前と同じように通学している」というが、広報室は「個々の学生の登校状態は把握していない」とした。

 一方で広研の代表を務めていた男子学生が、無期停学処分を受けていることが分かった。暴行した学生らは広研の別動隊とされ、代表の学生は飲み会の場にいなかったが、未成年飲酒などの責任を問われたとみられる。広報室は「個々の処分を対外的に広報しない」と、疑惑に関わった学生の処分については答えなかったが「警察の捜査が始まっており、推移を見守り厳正に対処する。今後、処分を発表することもありうる」としている。
http://news.livedoor.com/article/detail/12160328/

レイプについては知りませんでしたという慶應当局の主張は崩れてしまったわけだ。また、「未成年飲酒」云々が「無期停学処分」に値する悪事だとは全く思わない。
ところで、これらの報道にはもうひとつの前提があって、〈いい子〉への同情の前提にもなっているのだ。それは「ミス慶応コンテスト」は無条件によきこと(伝統)であるということ。「ミスコン」については、(一部の単純なフェミニストのように)女性差別だから禁止しろというようなことはいいたくない。しかし、「ミスコン」というのが或る差別的且つ抑圧的な欺瞞を前提として存立しているということも事実なのだ。
See also


「【慶大・集団暴行事件】無関係のTBS井上アナ「後輩が失礼しました」と“謝罪”」http://news.livedoor.com/article/detail/12155781/


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