やはり「廃棄」されていた

承前*1

東大本郷学生食堂の宇佐美圭司タブロー問題を巡る、東大生協と大学当局の「お詫び」の声明;


東京大学消費生活協同組合理事長 武川正吾東京大学中央食堂の絵画廃棄処分についてのお詫び」http://www.utcoop.or.jp/news/news_detail_4946.html *2
東京大学理事・副学長 石井洋二郎、小関敏彦「東京大学中央食堂の絵画廃棄処分について」https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/news/notices/notices_z1602_00002.html


朝日新聞』の記事;


東大生協、画家の大作を廃棄「重大さに思い至らず反省」
2018年5月8日11時48分


 東京大学(東京都文京区)安田講堂前の地下食堂に飾られていた著名画家の大作が、施設改修で行方不明になっていた問題で、食堂を管理する東大生協が8日、正式に廃棄を認めた。ホームページに「貴重な文化資産である作品を失うことの重大さに思いが至らなかったことを深く反省する」などとした「お詫(わ)びと経緯」を載せた。

 飾られていたのは、1972年のベネチア・ビエンナーレで日本代表を務めた故・宇佐美圭司さんの4メートル角の作品「きずな」。生協によると、76年に生協創立30周年記念事業として制作を依頼したという。

 今年3月の食堂改修を前に生協と大学で作品の取り扱いを検討したが、絵が壁に固定されていて技術的に取り外せないなどと議論になり、生協は昨年9月に廃棄したという。生協は専門家に相談せず、「実際には可能であった搬出や保護の方法について検討を怠った」「作品の芸術的価値や文化的意義について十分な認識を共有しなかった」としている。

 生協は3月、改修にあたって絵の行方を尋ねる質問にホームページで、「新中央食堂へ飾ることができず、また別の施設に移設するということもできないことから、今回、処分させていただくことといたしました」と回答。「吸音の壁」になることや「意匠の面」で絵が飾れないことを処分の理由に挙げていたが今回、「事実に基づかず、きわめて不適切な回答」として撤回した。

 76年当時、学食の壁にだれの作品を飾るか大学側から相談を受け、宇佐美さんを推薦した高階秀爾・東大名誉教授(美術史)は「かなりの大作で、宇佐美さんも一生懸命に描いたものだ。作風は代表的なもので、廃棄したというのはひどい話。たいへん驚いたし、残念だ」と話した。

 高階さんが過去に宇佐美さんの展覧会に寄せた文章によると、「いかに大学がレジャーランド化していると言われているにしても、大学はやはり学問の府」と考え、芸術作品として優れている▽現代的である▽感性と知性に等しく訴えるという観点から、自作を論理的に解説する宇佐美さんの作品を推したという。
https://www.asahi.com/articles/ASL583FP6L58UCLV001.html

宇佐美さんを推したのは高階秀爾先生だったか。高階秀爾がまだ健在なのに吃驚した旨のことを述べている方がいたのだが、高階先生は岡山県倉敷の「大原美術館」館長としてまだ現役で日本の美術界を動かしているのだった*3。さて、宇佐美さんの特性として、「感性と知性に等しく訴える」ということが挙げられているのだが、これはけっこう肯いてしまう。コンセプチュアル・アートのような表現の零度、主知主義の極にも走らないけれど、無邪気に表現(主観性)を肯定するには知性的すぎ、中庸にぎりぎり踏み止まるという感じ。