楊鳳蘭

『ハフィントン・ポスト』(『朝日新聞』)の記事;


2019年02月20日 10時10分 JST
象牙の女王」の中国人実業家に実刑判決 350頭以上のゾウの牙を密輸
地元メディアなどによると、2000年から14年ごろまでの間、約6億1600万円相当の象牙を密輸したなどとして、15年に訴追された。
朝日新聞デジタル


象牙の女王」の中国人に実刑判決 350頭以上を密輸

 350頭以上のゾウの牙を密輸したなどとして、アフリカ東部タンザニアの裁判所は19日、「象牙の女王」と呼ばれた中国人実業家、ヤン・フェン・グラン被告(69)ら3人にそれぞれ禁錮15年の実刑判決を言い渡した。

 地元メディアなどによると、ヤン被告は2000年から14年ごろまでの間、130億タンザニアシリング(約6億1600万円)相当の象牙を密輸したなどとして、15年10月に訴追された。


 ヤン被告は1970年代からタンザニアに住み始めた。現地にある中国アフリカビジネス会議の事務局長を務める一方、東アフリカと中国との間で巨大な密輸ネットワークを築いたという。

 象牙は中国やベトナムなどでネックレスや彫像品として需要があり、密猟が横行。タンザニア国内のゾウは09年の約11万頭から5年後に約4万3千頭まで急減しており、国内外で取り締まりが強化されている。(ヨハネスブルク=石原孝)

朝日新聞デジタル 2019年02月20日 09時48分)
https://www.huffingtonpost.jp/entry/queen-of-ivory_jp_5c6ca5f1e4b0e37a1ed299f8

See also


Sophie Tremblay “Chinese 'Queen of Ivory' jailed for 15 years in Tanzania” https://edition.cnn.com/2019/02/19/africa/tanzania-jails-chinese-woman-intl/index.html
Adrian Blomfield “Chinese 'Ivory Queen' who smuggled tusks of more than 350 elephants jailed for 15 years” https://www.telegraph.co.uk/news/2019/02/19/chinas-ivory-queen-sentenced-15-years-tanzanian-court-smuggling/
“Tanzania convicts Chinese 'Ivory Queen' Yang Fenglan” https://www.theeastafrican.co.ke/news/ea/Tanzania-convicts-Chinese-Ivory-Queen-Yang-Fenglan/4552908-4989254-b0mejv/index.html


「350頭以上のゾウの牙」という表現を見て、笑ってしまった。「象牙」の単位は本でしょ。省略した「350頭以上を密輸」だと、象を生きたまま「350頭以上を密輸」したの? と思ってしまう。「350頭以上のゾウの牙」の場合、「350頭以上」が影響するのは「ゾウ」までで、「牙」には影響しないよと言われればそれまでなのだけど、だったら、700本以上の象牙と書けばいいじゃん! ところで、CNNの記事には、”860 elephant tusks”と記されている。頭数に換算すると、430頭になる。『テレグラフ』は朝日と同じ数を採用している。タンザニアの隣国ケニアThe East AfricanもCNNと同じ860本。
また、「ヤン・フェン・グラン」というのは(少なくともマンダリンで発音する)中国人の名前としてはありえないな、と思った。そこで、queen+ivory+chineseを鍵言葉にして、英語のソースを検索してみた。上に挙げた3本はその一部なのだけど、


Yang Feng Glan(CNN)
Yang Fenlan(Telegraph)
Yang Fenglan/Yang Fenlan(The East African)


と表記が街々なのだった。実はThe East Africanが正しい。片仮名にするなら、「ヤン・フェン・グラン」じゃなくて、


ヤン・フェンラン


だよ*1。今度はYang Fenglanを鍵言葉にして中国語のソースを検索してみたら、漢字に戻すと、「楊鳳蘭」になることがわかった*2。中国のおばはんが遥かタンザニアに定住して象牙の密輸に関わっていたこと。これには歴史的な意味があるようだ。彼女は文化大革命中に北京外国語大学でスワヒリ語を学んだ。そして、1970年代のタンザニアはアフリカ大陸最大の親中国家で、タンザニアの「タンザン鉄道」は中国の全面的な援助によって建設された*3。楊鳳蘭はその鉄道工事の通訳としてタンザニアに派遣された。それがタンザニアとの関わりの始まりだった。鉄道完成後は一旦中国に帰国したが、1990年代初めにアフリカに帰ってきて、中華レストランなどを経営していた。
タンザニアと中国との関わりについては、小川さやか『「その日暮らし」の人類学』*4をマークしておく。

「その日暮らし」の人類学 もう一つの資本主義経済 (光文社新書)

「その日暮らし」の人類学 もう一つの資本主義経済 (光文社新書)

*1:fengは慣習的にフェンと表記されることが多いけど、実際聞いてみると、ファン或いはフォンの方が近い。

*2:https://baike.baidu.com/item/杨凤兰/18712081?fr=aladdin

*3:See also https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20060406/1144286933

*4:See https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20180312/1520831453 also https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20180303/1520039463