街の声

「その日暮らし」の人類学 もう一つの資本主義経済 (光文社新書)

「その日暮らし」の人類学 もう一つの資本主義経済 (光文社新書)

小川さやか『「その日暮らし」の人類学』*1から。
コピー商品(ぱっちもん)を巡るタンザニアのムワンザ*2の街の声。


「もしコピー商品がなくなったら、我が家からテレビも扇風機もオーディオセットもアイロンも、都会的な生活らしいものは何一つなくなってしまう。コピー商品を規制することは、ブッシュの生活に戻れというのと同じだ」(p.144)

また消費者の多くは、自分たちはコピーや偽物だと知りながら買ったとしても、コピーや偽物だから買ったわけではないとも主張する。四〇代の主婦は、わたしが知的所有権について説明すると、購入したばかりのバッグを見せながら不満げに言った。

「わたしが購入したバッグはコピー商品だと思う。安かったから。でもわたしは流行りのデザインの商品が欲しかっただけで、わざとコピーを買ったわけじゃない」
(pp.145-146)

「スペルが微妙に違うアディダスのコピー商品*3のいったい何が問題なのか。俺たちはふだん穴のあいたスニーカーを履いている。少なくとも雨が降ったときに困るのは、穴があいていることのほうだ」(文具店主、男性、三〇代)
「ナイキのメッシュ(のシャツ)が偽物でも本物でも、サッカーが好きかもしれないなどと、そいつがどのような若者かしか気にならない。君が着ている服は偽物だとは誰も指摘しないし、高価なブランド品で着飾ったり、本物のブランド品しか買わないという若者は、マシャロバロmasharobaro(軟派な男)やビショーbishoo(ナルシスト)だと馬鹿にされる」(路上商人、男性、二〇代)(p.147)