岸本佐和子「あまりに何度も読んだ本」in 『白水社創立百周年記念冊子 一九一五-二〇一五』、2015、pp.28-31
ナタリア・ギンズブルグ『ある家族の会話』*1について。
「好きな本や感銘を受けた本は今まで数々出会ってきたが、読みおわるのが悲しくて本当に涙が出た本は、一冊しかない」という(p,29)。
ああでもやはり、この本が私にとって何より衝撃だったのは、須賀敦子の翻訳の力だ。〈歯じゃねえんですっとさ〉や〈この子ね、この子ね、この子わたしの犬のおねえさんなの〉等々、あまりに好きすぎて自分の一部になってしまったような言葉が、この本にはぎっしり詰まっている。エッセイの静謐で凛とした文章で知られる彼女だが、私は声を大にして言いたい。ねえみんな、須賀敦子はすごいコメディエンヌでもあるんだよ、嘘だと思ったらこの本を読んでよ! と。(p.30)
- 作者: ナタリアギンズブルグ,Natalia Ginzburg,須賀敦子
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 1997/10/01
- メディア: 新書
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