或る解決

北尾トロ*1「堅物で仕事一筋の課長が性器露出した理由」http://blogos.com/article/324192/


「独身」でなくても中年(40代)は「孤独」だという話*2。「電車内で女子高校生に露出した性器を見せた罪で捕まった40代サラリーマン」。
曰く、


中堅企業の課長職で子供が一人。帰宅はいつも終電近く、忙しいだけではなく、組織内の人間関係に悩み、思うような結果が出せないことに苦しんでいた。典型的な仕事人間で、これといった趣味はない。家庭内では家族から冷たくされ、妻からは一緒に寝ることを拒否され、孤独感は募るばかりだったそうだ。

そうしたフラストレーションが積み重なり、とうとう臨界点を突破。「電車の中で性器を出すことでしか発散できなかった」と被告人が涙ながらに語った。表情は憔悴しきっており、短期間で相当痩せたのではないかと思われた。


(前略)痴漢することも考えたくらいに欲求不満が溜まっていたようだ。でも、理性がかろうじて勝ち、ならばということで露出を選んだという。

「その二者択一はどうなんだ、五十歩百歩じゃないか」という意見はあるだろう。

しかし、追い詰められた被告人は、他のストレス解消法を思いつけなかったと真顔で言うのだった。なぜなら被告人は人生で一度も風俗店などに行ったことがなく、酒も飲まないため、歓楽街は怖いところだと思いこんでいたからだ。そういう店へ行くと必ずボラれると思いこんでいたので、自分の乏しい小遣いでは間に合わないだろうと。また、妻以外の女性とつきあった経験もないので、女性とどう接したらいいかわからず、セックスすればみじめな気持ちになるだけだと決めつけてもいた。

ガマンを重ねていたが、家と職場の往復で、他に人間関係を持たず、悩みを相談する相手もいない。スポーツとは縁遠く、映画や音楽に親しむこともない。休みの日は家にいると煙たがられるので外出するが、行くところがない。そんなとき、思いついてしまったのである。

痴漢なら金もかからずスリルも満点じゃないか……。でも行動に移す度胸はなく、相手に直接触れない性器露出で手を打つことにしたのだ。


リスクの大きさに対し、得られるものはほんの一時の快楽のみ。たとえ捕まらなかったところで、仕事がうまくいくわけでもなければ家庭不和が解消されるわけでもない。繰り返すが、性的満足を得るだけなら法律の許す範囲で可能なのだ。

にもかかわらずリスキーな方法をとったのはなぜなのか。はっきり口にこそしなかったが、断片的に語られた内容を総合するとこうなる。

<生きている実感が欲しかった>


極端な例なので、自分とは関係ない、そんなバカなことするはずがないと思う読者もいるだろう。だが、これに限らず、堅物で仕事一筋の人間が事件を起こすことは少なくない。共通項は、会社と家庭を取ったら何も残らないような、無趣味で単調な生活をしていることだ。仕事抜き、家庭抜きの人間関係がないため、仕事がうまくいかないとか、家庭がギクシャクすると、一気にピンチに陥ってしまう。
「無趣味」の罪ということになるのだけど、それは家族や職場以外の第三の社会空間が欠如しているということ。それで、「趣味」の勧めということになるのだけど、改めて思ったのは、一般にくだらないとされている物事、パチンコにせよエロ・サイトにせよ場末のスナックにせよ、みなそれなりに存在理由というのはあるのだということ。
ところで、「 妻からは一緒に寝ることを拒否され」ているというのは、ドメスティック・ヴァイオレンスすれすれなのでは?