「ジェンダー」じゃないし

田中俊英*1「幼児を狙う性犯罪のむごさの「根源」」https://news.yahoo.co.jp/byline/tanakatoshihide/20180604-00086041/


ペドフィリアなる性的嗜好*2の発生や存在、その〈如何にして(how)〉、さらには〈何故(why)〉の端緒に触れることができるかも知れない。しかし、(というか当然というべきか)その期待は裏切られた。
「Y遺伝子に基づいたオトコジェンダー」に還元したいようだけど、そもそも遺伝学的或いは解剖学的準位における性別を「ジェンダー」とは言わない。セックスと呼ぶのが妥当だろう。「ジェンダー」とは心理学的準位(例えば性同一性)や社会・文化的準位(例えば性別役割期待)、さらに言えば言語学的準位における性別のことをいうのでは? 何故、「ジェンダー」が殊更に問題になるのかといえば、遺伝学的或いは解剖学的準位における性別と心理学的、社会・文化的準位における性別の一貫性が人間学的に自明ではないからだ(例えば性同一性障害)。
また、ペドフィリアと一括して呼んでいいのかどうかわからないけれど、小児性愛の対象は必ずしも女性とは限らないし、その担い手も男性とは限らない。例えば、〈ショタ〉とか。なので、小児性愛を男性のヘテロセクシュアリティを起点に考えられない。
小児性愛についての「精神医学的な分析」が批判されている。それはそうだろうと思う。しかし、大方の子どもを対象とした「性犯罪」は、「Y遺伝子」にまで遡行するのではなく、もっと表層的な社会学的準位において説明可能だろうし、説明されて然るべきだろう。本来的な意味での「ジェンダー」が関与する。具体的には、(マートン的な意味における)アノミーの一形態*3であるとか、或いは抑圧の下方移譲であるとか。

*1:See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20140102/1388675061

*2:Mentioned in http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070208/1170915951 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070928/1190987965 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080315/1205588068 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20081211/1228971729 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090918/1253277638 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20101015/1287072241 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20101213/1292243637 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20110530/1306785462 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20130316/1363428871 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150528/1432832981 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160428/1461819737 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160808/1470671661 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20161221/1482344691 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20170816/1502902851 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20170911/1505096219 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180117/1516159062 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180525/1527200521 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180601/1527817994 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180602/1527896743

*3:Cf. 『社会理論と社会構造』。

社会理論と社会構造

社会理論と社会構造

See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070112/1168571361 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070422/1177259244 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090210/1234271618