「敬意を欠いている」(Philippe Mesmer)

佐川宣寿証人喚問問題*1については、こちら側の事情によって、これまで言及しそびれていた。何れ、個人的な備忘録という仕方でまとめたいとは思っている。しかし、仏蘭西人ジャーナリスト、フィリップ・メスメール氏*2の発言は、独立して書き留めておく価値があると思った;


川喜田研「外国人特派員が森友「公文書改ざん」に見た日本の深刻な病──この国みんなが“民主主義のお芝居”を演じているだけ?」https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180405-00102558-playboyz-pol


週刊プレイボーイ』のインタヴューに答えて、「佐川氏の証人喚問を見た印象」を語る;


メスメール まず感じたのが、彼が国会に対して敬意を欠いているという点です。財務省理財局という、かつて自分が責任者を務めていた組織が公文書の改ざんという絶対にあってはならない行為を組織的に行ない、改ざんされた文書で「国民の代表」である国会を欺いた。その事実を認め、自分がその責任者であることをハッキリ認めているにもかかわらず、佐川氏からは国会への敬意が全く感じられませんでした。これは大変に酷い、許しがたいことだと思います。

証人喚問で佐川氏は、安倍首相や昭恵夫人財務大臣らの「指示」を明確に否定しました。それはおそらく事実なのだと思いますが、表面上の事実であっても「真実」ではないと思います。常識的に考えて、公文書改ざんのような行為を首相や財務大臣という要職にある人物が具体的・直接的に指示することなどあり得ないからです。

では、それを間接的に示唆する何かがあったのか? あるいは、いわゆる「忖度(そんたく)」で財務省の官僚が政権の意向を感じ取って公文書改ざんにまで手を出してしまう両者の関係性が存在したのか?というのが「真実」に関わる部分であるはずです。

この一件を見て私が思い出したのは、17年前の2001年にあった、NHKのドキュメンタリー番組「ETV2001」の内容に自民党が干渉したとされる問題でした。従軍慰安婦の問題など「日本の戦時性暴力」を扱ったドキュメンタリー番組がなぜか放映前に自民党の政治家にチェックされ、当時の官房副長官だった安倍氏がNHKの役員を呼び出して「事情を聴いた」後、局上層部の指示で番組内容が大幅に再編集されたと言われている事件です。

この時も安倍氏は編集のやり直しを「指示」したわけではなく、その内容に「疑問」を示しただけなので、いわゆる検閲にはあたらないと主張していたのですが、現実には政府の意向を忖度してNHKの上層部が番組内容の変更を指示してしまったわけでしょう。おそらく今回の財務省による公文書改ざんでも、それと同じようなことが起きているのではないかと思いますが、仮に具体的・直接的な指示がなかったとしても、今述べたような「真実」があるのだとしたら、それは民主主義にとって重大なダメージを与えることになります。

また、「改ざんの事実が明らかになり、それを財務省も認めているにもかかわらず、佐川氏も含めて、それに関わった可能性のある人たちが未だに自由な身のままでいるのは信じ難いことです」として、

民主主義、官僚制の根幹を揺るがす大事件が起きているのに、不正行為を働いた人たちが未だに「野放し」であるのはおかしいでしょう? この状況では証拠隠滅の恐れもあるし、他の関係者と口裏を合わせることもできる。財務省内ではこの問題に関連して自殺者まで出ているのですから*3、証人の身柄の保護という意味でも、検察が強制権のある形で捜査を進めるべきだと思います。
ところで、


「首相「高い倫理観を持って」新人公務員たちに訓示」https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180404/k10011390381000.html *4


曰く、


安倍総理大臣は東京都内で開かれた国家公務員の合同研修の開講式に出席し、この春、各府省庁に採用されたおよそ750人を前に訓示を行いました。

この中で安倍総理大臣は「本年は明治維新から150年となる。明治時代、若い多くの官吏が奮闘し、近代国家日本の基礎を創り上げた。先輩たちに負けないくらいの気概を持って、これからの仕事に目いっぱい取り組んでほしい」と述べました。

そのうえで安倍総理大臣は「国家公務員の仕事は国の骨格を作る仕事だ。国民の負託に応えるべく、高い倫理観のもと、細心の心持ちで仕事に臨んでほしい。高い誇りを持ってわが国の将来を大胆に構想し、批判を恐れず、果敢に挑戦してほしい」と述べました。

「高い倫理観」を持った官僚は佐川宣寿の証言(の仕方)に対して、どのような倫理的態度を取るのか。さらには、安倍晋三に対してどんな態度を取るのか。