「自己肯定感」と「集団生活」?

NHKの報道;


日本の高校生 自己肯定感低い傾向 日米中韓で調査
4月3日 4時34分


日本の高校生はアメリカや中国、韓国の高校生と比べて自己肯定感が低い傾向にあるという調査結果がまとまりました。

この調査は、国立青少年教育振興機構がほかの3か国の研究機関と協力して実施し、各国の高校生合わせて8480人から回答を得ました。

この中で、自分が「価値のある人間だと思う」と答えた高校生の割合は日本が44.9%で、ほかの3か国は80%以上でした。

また、「自分に満足している」、「つらいことがあっても乗り越えられる」という質問に、「そう思う」と解答した日本の高校生の割合は4か国で最も低く、自己肯定感が低い傾向にあることがわかりました。

さらに、日本の女子高校生は自分の体型を「太っている」「少し太っている」と考える割合が51.9%で、アメリカの高校生より30ポイント以上高くなっていました。

高校2年の女子生徒は「人より得意なこともないし自信がないことばかりです。夜になるといつも落ち込みます」と話していました。

国立青少年教育振興機構は「集団生活の体験が減って、他人の評価を気にする若者が多くなっていることが原因ではないか」と話しています。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180403/k10011388681000.html

若者を中心とした「自己肯定感」(或いは自己評価)の国際比較調査というのはは昔から行われていた筈であり、日本人の「自己肯定感」の低さというのは昔から問題になっていたのではないかと思う。オリジナルの報告書などは読んでいないので、勝手に云々すること自体が失礼なことかもしれないけど、この報道に接して先ず思ったことは、昔とあんまり変わってないなということだった。それで、最後のパラグラフの「集団生活の体験が減って、他人の評価を気にする若者が多くなっていることが原因ではないか」というのを読んで、けっこう脱力してしまった。これが「原因」として認定されるためには、少なくとも以下のようなことが示されなければならないだろう。以前の日本の高校生は「集団生活の体験」が多く、そうした時代の高校生は現在の高校生よりも「自己肯定感」が高かったこと。また、米国や中国や韓国の高校生は日本の高校生よりも「集団生活の体験」が多いこと。日本の高校生でも「集団生活の体験」が多い人は「自己肯定感」が高いこと。最後のことに関しては、部活とか暴走族活動のような「集団生活」で「自己肯定感」を達成するのに失敗した人は「集団生活」へのコミットメントから撤退する傾向が高く、結果として「自己肯定感」が高い人ばかりが「集団生活」に残ることになるという可能性も考えられるけれど。
さて、「自己肯定感」と所謂「幸福度」というのはかなり重なる部分があるんじゃないかと考えるのはかなり自然なことだろう。国連のSustainable Development Solutions Networkによる『世界幸福度調査』2018年版*1によると、米国は世界18位、日本は54位、韓国は57位、中国は86位である。「幸福度」が高い米国の高校生の「自己肯定感」が日本の高校生よりも高いというのはまあ納得できる。他方、「幸福度」が日本と比べてかなり低い中国の高校生の自己肯定感が高いというのは、どうしても首を傾げてしまう。高校生くらいの年齢層では国別の全体的サンプルから逆転が起こっているのだろうか。
ところで、「自己肯定感」というのは、日本国憲法謂うところの「個人」として「尊重」される経験と密接に関係しているとは言えるだろう(Cf. 菅原潤『京都学派』*2、pp.242-243)。
京都学派 (講談社現代新書)

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