平井久志*1「北朝鮮「平昌平和攻勢」の舞台裏(5)鍵は「スウェーデン」と「韓成烈」という男」http://www.huffingtonpost.jp/foresight/north-korea-han-2018-0227_a_23370844/
北朝鮮或いは朝鮮半島情勢を巡っては、極東から遠く離れた瑞典がこれまで重要な役割を演じてきたし、また今後も演じることが期待されている。
瑞典の北朝鮮或いは朝鮮半島に対するコミットメントは「朝鮮戦争」に遡る;
昨年12月19日から21日まで、スウェーデン政府特使であるケント・ロルフ・マグヌス・ハールステット国会議員一行が訪朝した。一行は北朝鮮滞在中、李洙墉(リ・スヨン)党副委員長(党国際部長)、李容浩(リ・ヨンホ)外相、韓成烈(ハン・ソンリョル)外務次官らと意見交換をした。『朝鮮中央通信』は12月21日、「(両国は)席上、両国関係を様々な分野で拡大、発展させて行く問題が討論され、最近の朝鮮半島情勢と関連して意見を交換した」と報じた。
ハールステット特使は訪朝に先立ち中国を訪問、昨年12月18日に6カ国協議で中国の首席代表を務める朝鮮半島問題特別代表の孔鉉佑外務次官補(当時。今年、次官に昇格)と会い、朝鮮半島問題で意見を交換していた。ハールステット特使は昨年6月20日から23日にも訪朝し、金永南(キム・ヨンナム)最高人民会議常任委員長、李洙墉党副委員長、李容浩外相と会っている。
『朝日新聞』は1月14日付記事でソウルの情報消息筋の話として、この協議で北朝鮮とスウェーデンが外務次官級協議を開催することで合意した、と報じた。
米国とカナダが共催する北朝鮮の核・ミサイル問題に関する外相会合が、カナダのバンクーバーで1月16日に開催されたが、スウェーデンもこれに参加した。『聯合ニュース』によると、韓国の康京和(カン・ギョンファ)外相はこの外相会合でスウェーデンの外務次官と非公開の会談を行った。同ニュースは、韓国と北欧国家が対北朝鮮政策で協力体制をつくる方法などで意見交換をした、と報じた。
そして、北朝鮮の韓成烈外務次官が1月27日に平壌を出発し、同29、30日の両日スウェーデンを訪問し、2月6日に北京経由で平壌へ帰国したのだった。
朝鮮戦争(1950〜53年)が休戦状態になって以来、スウェーデンは西側ではスイスとともに休戦協定の中立国監視委員会のメンバーを担ってきた。さらに1973年、西欧の国としては最初に北朝鮮と国交を結び、1975年には平壌に大使館を設置した。こうした経緯から、スウェーデンは北朝鮮における米国、カナダ、オーストラリアの利益代表部の役割を果たしている*2。北朝鮮では、観光目的で入国した米国人が拘束されたりするが、拘束された米国人の面会などの領事業務をスウェーデンに代行してもらっている。
日本は拉致問題の再調査などのために北朝鮮と非公式協議を続け、2014年5月に合意内容を文書化したが、この最後の詰めはスウェーデンの首都ストックホルムで行われた。そのため、この時の合意文書は「ストックホルム合意」と呼ばれている。スウェーデンは朝鮮半島問題だけでなく、国際的な紛争において中立的な立場を維持しながら、仲介や外交舞台を提供するなどしてきた実績があるのだ。
オバマ政権下での米朝間の非公式協議は2015年末から始まったが、それもスウェーデンのストックホルムだった。しかも、これに出向いたのは韓成烈氏であった。