最近、TVというのは「コンテクスト」がいっぱいあるというその親切故に私たちの言語読解力を損ねているという主旨の丸谷才一のパッセージ(「日本語があぶない」in 『ゴシップ的日本語論』)に言及した*1。さて、本屋を兼ねたカフェに、吉野源三郎『君たちはどう生きるか』の岩波文庫版と羽賀翔一氏による漫画版が並べてあったので、ついつい2冊を交互にぱらぱらと捲り始めてしまった。コミック版のインパクトは何といってもそのカヴァーだろう。「コペル君」の顔のアップ。小説には、クラスでいちばん背が低い方だというような記述はあるものの、これまでの読者は「コペル君」の具体的な外見については、あまり意識はしない、或いは勝手に想像するという仕方でテクストと付き合ってきた筈だ。しかし、コミック版の出現によって、「コペル君」のイメージがどアップで固定されてしまった。そこで丸谷才一による「コンテクスト」話を思い出してしまったわけだ。勿論、マガジンハウスや羽賀翔一氏を非難したいわけではない。映画にせよ漫画にせよ、文字をヴィジュアル化する際に必然的に生起してしまうこと。昨日久しぶりに使った表現を捩るなら、lost in trasnlationならぬgained in adoption*2
- 作者: 丸谷才一
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- 作者: 吉野源三郎
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- 作者: 吉野源三郎,羽賀翔一
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