「この本の存在すら知らなかった」

漫画 君たちはどう生きるか

漫画 君たちはどう生きるか

君たちはどう生きるか (岩波文庫)

君たちはどう生きるか (岩波文庫)

承前*1

石戸諭*2「ついに100万部突破『君たちはどう生きるか』 若き漫画家が描き切った「人生で大切なこと」」https://www.buzzfeed.com/jp/satoruishido/haga-yoshino



昨年12月の記事。吉野源三郎君たちはどう生きるか』を漫画化した「主人公のコペル君にそっくりなメガネ姿の」羽賀翔一氏へのインタヴュー。


物語の核はどう表現するのか。羽賀さんは、原作者・吉野源三郎と向き合い、コペル君に向き合い、彼が「どう生きるか」を考え抜く。

マンガで表現されているのは、羽賀さんの感性でしか捉えられなかった名著の本質だ。

《僕は恥ずかしながら、この本の存在すら知らなかった。ちょうど2年前、編集者を介して、漫画化のお話をいただいてから、初めて原作を読みました。

このタイトルで、岩波文庫でしょ。最初は「どんだけお堅い話なんだろう?」って思ったんです。

読み始めて、これはキャラクターがちゃんと存在している。ただの説教くさい話ではなくて、人間が描けているんだって思ったんです。》


物語のハイライトは終盤にある。

友人たちと暴力を振るう上級生に立ち向かおうと誓いあいながら、コペル君だけが暴力に怖気づき、立ちすくんでしまう場面だ。

いじめを目の前に、コペル君は彼らを裏切り「死んでしまいたい」と思う……。

羽賀さんは、原作と構成を変え、このシーンをマンガ版の冒頭に持ってきた。


《この小説のタイトルは『君たちはどう生きるか』ですが、どう生きろというのは書いていないんですよね。

つまり「こう生きろ」と答えをだす本じゃないんです。

むしろ対極で、どう生きるかを、自分で考え続けること。抱え続けること。それを放棄しないということが書かれている本なんです。

目指したのは、マンガとしてもおもしろく、何年も読み継がれる作品です。なにも知らないで、ぱっと手に取って立ち読みする人に、どうすれば読んでもらえるか。

最初のシーンは、何度も、何度も書き直しました。原作は主人公の紹介からすっと始まるけど、これをそのままマンガにしても弱い。

原作のおじさんのノートはあえて、そのまま収録することにしました。マンガはキャラクターの会話なので、ノート部分を無理やりマンガにすると、あんまり生き生きとしないんです。

マンガ部分とテキストであるノートが交互にくると、ただでさえ読みづらい。説教くさい本なんだって閉じてほしくないと思ったんです。

だから、冒頭から引き込んで読んでもらえるように、コペル君が死にたいと思うくらい悩んで、泣くという強い感情が出ている部分から始めようと思いました。

読者に「この少年になにがあったんだろう」と興味を持ってもらえるんじゃないかって考えたんです。

強く悩むシーンがあって、おじさんの手紙を読むと読み方が変わってくる。》