- 作者: 吉野源三郎,羽賀翔一
- 出版社/メーカー: マガジンハウス
- 発売日: 2017/08/24
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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森朋之「『君たちはどう生きるか』なぜマンガで大ヒット? 80年以上前の原作に感じた可能性とは」https://www.huffingtonpost.jp/2018/05/31/manga-kimitachiwadouikiruka_a_23448280/
羽賀翔一による漫画版『君たちはどう生きるか』*1を巡って。担当編集者の鉄尾周一氏(マガジンハウス取締役)の話を中心に。
最初は「40代」だった;
また、
本が発売された当初は「5万くらい売れたらいいな」と思っていたと鉄尾氏は当時を振り返るがこれだけの大ヒットを生み出した背景には、一体どんな販売戦略があったのだろうか?今では、男女問わず幅広い層に支持されている今作品だが、そこには「まずは原作を知っているであろう40代以上の男性にアピールしたかった」という思いがあったという。そこで、全国を先駆け、ビジネスマンが多く訪れる丸善日本橋店で先行発売を行った。「丸善日本橋店の店長は以前から知り合いで、本を見る目も確か。まずは彼にこの作品を読んでもらおうと思ったところ『すごく良い作品なので、先行発売しましょう』ということになりました。ご存知の通り、日本橋はビジネスマンが多い。まずは原作を知っているであろう40代以上の男性にアピールしたいという狙いもありましたね。100冊以上入れていただいたのですが、すぐに良い反応があり、そこから広がっていきました」(鉄尾氏)
発売されると狙い通り、ミドル世代の男性を中心にすぐに反響を集めた。さらに原作を愛読していた書店員の目に留まり、代官山蔦谷書店、紀伊国屋書店などで特設コーナーが展開され、読者層がさらに拡大行く。支持してくれた書店員たちがコーナ開設や手書きのPOPなどで売り場から盛り上げてくれたのも大きかったという。女性から火がついて男性へと広がるヒットパターンが多い中、あえて"原作を知っている40代男性" をピンポイントでターゲットにしたことで、熱量の高い反応を集め、評判が口コミとなり、さらに若い世代へと広がっていったのだろう。
「最初は40代以上の男性が中心だったんですが、その後は10代、20代の若い人たちに広がった印象があります。『子供に読ませたい』という方も多く、小学生から読者ハガキが届くことも増えましたね。コペルくんにはお父さんがいなくて、その代わり"おじさん"といろいろな話をする。その"おじさん"の役割を担っているのが、この本だと思うんです。親が子供に対して人生について語ると「うざいな」ということなりがちですが、この本を渡して「読んでみたら」と言えば伝えやすいかもしれない。そういう橋渡しができているのかもしれないですね」(鉄尾氏)
政治、ビジネス、スポーツなど、さまざまなところでモラルについて考えさせられる出来事が頻発している現在の日本。自らの生き方を真摯に問いかける『漫画 君たちはどう生きるか』がヒットした背景には、こうした社会情勢も関係しているのだろう。「バブルの時代であれば、景気が良く、毎日が楽しいという人が多かったわけで、こういう本を出して『どう生きようが、余計なお世話だ』と思われ、売れなかったかもしれない。今は不安も多い時代だし、だからこそ『どう生きていくべきか』というメッセージが突き刺さったのかなと」(鉄尾氏)