「渠」(泉鏡花)

外科室・海城発電 他5篇 (岩波文庫)

外科室・海城発電 他5篇 (岩波文庫)

泉鏡花*1の短篇集『外科室・海城発電 他五篇』を読み始めたのだが、ここに収められた作品では「渠」という三人称代名詞が使われているのだった。「かれ」というルビが振られている。この本に収められた短篇は明治27年から30年の間に書かれている(川村二郎「解説」、p.267)。現代の標準的日本語では、「かれ」は英語のheや仏蘭西語のilに対応する言葉として、専ら男性を指示する。sheやelleに対応して、女性を指示するのは〈かのじょ〉ということになっている。しかしながら、明治の中頃の「渠」(「かれ」)はジェンダー・フリーである。
See also


「渠という字」http://www4.plala.or.jp/agatha/AGATHA619.html


このエントリーでも、鏡花の短篇「義血侠血」が言及されている。
三人称代名詞については、http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070520/1179632703 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20170519/1495210579も参照のこと。