若松英輔*1「亡き者からの促し」『図書』(岩波書店)822、pp.56-59
『『こころ』論――語られざる「遺書」』という夏目漱石の『こころ』*2を巡る連載の一部。
書くこととメモすることは、外見上は似た営みであっても内実はまったく異なっている。メモをするとき、何を記すかはすでに決まっているが、書くことにおいて人は、単に考えていたことを言葉にするだけではない。むしろ、書くことによって自分が何を考え、感じていたのかを知る。「書く」とは自らの内面にある未知なるものと出会おうとする試みである、とも言える。
遺書には、書くことに戸惑う「先生」の姿がはっきりと刻まれている。自らの意思*3でペンを握ってはいるが、「先生」は自分が何を書くのかを厳密には知らない。遺書を書く決意は定まっていても、自分のこころが何を感じているのかを彼は十分に認識できていない。
出さなかった手紙を書いた経験は誰にもあるだろう。もし、手紙がメモのように考えたものを文字にするだけなら、出せないという現象は起こらない。手紙を書くことは、しばしば書き手の思いを超えた行為になる。予想と異なる言葉を書く手を止めることもできるはずなのだが、それも自由にならず、最後まで書き切ったうえで、投函しないまま机に仕舞い込む。それが手紙の現場だ。(後略)(p.57)
- 作者: 夏目漱石
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2004/03
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(…) in the process of writing, we suddenly have new ideas about the deeper reaches and meaning of our book, about what it will imply when it is finished. Then we review and reconsider what we have already written, in the right of this new center.(...) (p.175)
The Naive and the Sentimental Novelist: Understanding What Happens When We Write and Read Novels
- 作者: Orhan Pamuk,Nazim Dikbas
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*1:See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20120408/1333853663 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20151231/1451538519 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160102/1451724431 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160104/1451885260 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160108/1452229598 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160115/1452828304 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160128/1453954259 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160201/1454306068 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160206/1454729734 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160215/1455468573 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160226/1456453149 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160303/1457019539 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160329/1459223438 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160429/1461900469 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160919/1474248538 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160922/1474562801
*2:Mentioned in http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070817/1187353541 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20120301/1330618754 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160902/1472832572
*3:Sic
*4:See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20110715/1310706171 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20170530/1496164941