鰐口の方が古い?

広坂さん曰く、


今年も高尾山へ。

数年前から境内にごてごてしたデコレーション(とってつけたような新造の天狗像など)が目立つようになって私自身は興ざめしている。

これもまた数年前から目につくようになったのが、寺院の本堂で柏手を打って参拝する人たち。中年に多い。

高尾山薬王院はもとは神仏習合の修験の寺だが、仏教優位で飯綱大権現を祀ってきたわけだし、明治の神仏分離令の時は真言宗であることを選んだ仏教寺院である。

本堂の前では線香も焚いているし、僧侶はお経を読んでいる。

柏手を打っている人たちを観察していると、律義に二礼二拍一礼をしている人が多い。神社拝礼のマナーとして宣伝されているやり方だ。マナーを気にするなら、ここでそれはやめてほしいのだが。
http://d.hatena.ne.jp/t-hirosaka/20170102/1483296113

寺というか仏前で柏手を打つ人が増えているのか。そういえば、私は子どもの頃、仏壇の前で柏手を打って、大人に怒られたことがあったよ*1
この話とは直接関係がないのだけれど、神社と寺の差異として、鈴と鰐口の話を書こうと思った。ところが、鰐口のある場所では駄目だけれど鈴のある場所では柏手を打っていいよというような単純な話ではないようだ。勿論大まかにいって、鈴*2は神社、鰐口は寺にある(と取り敢えずは言える)。しかし、鰐口のある神社もあるし、それどころか「「鰐口」[という言葉]の初見は正応6年(1293年)銘をもつ宮城県柴田郡大河原町にある大高山神社のもの(東京国立博物館所蔵)」であるという*3。また、『神社ナビ』というサイトには「神社でお参りする人が鈴を鳴らすようなったのは江戸時代後期になってからのようです」という記述がある*4。さらに「神社で鈴を鳴らして拝むのは戦後に広く行われるようになったもので新しい」という人もいる*5。要するに、鈴/鰐口、神道/仏教という対立は成り立たないということだ。これらの対立に加えて、女/男、紅/白といった対立を重ね合わせている方もいるのだが*6、残念ながらそれも成り立たない。鰐口の方が古いようなのだが、中国の寺には鰐口のようなものはない。日本で独自に発展したものなのだろうけど、その起源もわからない。

*1:http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070314/1173892507

*2:See eg. 神社本庁「参拝の際に鳴らす鈴について」http://www.jinjahoncho.or.jp/iroha/omairiiroha/suzu/ 神社オンラインネットワーク連盟「なぜ拝礼前に鈴を鳴らすのですか」http://jinja.jp/modules/chishiki/index.php?content_id=109

*3:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%B0%90%E5%8F%A3 但し、出典不明。また、このWikipediaの「鰐口」の項には京都の「吉祥院天満宮」の「鰐口」の写真が添えられている。

*4:「神社と鈴との関係」http://www.jinja-fan.com/010shrines/002.html

*5:http://d.hatena.ne.jp/boianuf/20130905/1378363390

*6:Eg. 「鈴と鰐口」http://www.shushoji.jp/news/?p=283