解離と善意と

承前*1

寺内樺風による女子中学生拉致・長期監禁事件の公判。
『日刊スポーツ』の記事;


朝霞事件被害者の母「一生刑務所から出さないで」

日刊スポーツ 11/3(木) 10:07配信


 埼玉県朝霞市で中学生だった少女(15)が誘拐され2年ぶりに保護された事件で、未成年者誘拐と監禁致傷などの罪に問われた寺内樺風(かぶ)被告(24)の第2回公判が2日、さいたま地裁(松原里美裁判長)で開かれ、寺内被告が、被害者に謝罪の言葉を口にした。ただ、事件については「残念ながら」「結果的に事件を起こした」などと人ごとのような供述を繰り返した。

 被害者の母親が証人尋問に出廷し、被害者の現在の状況を語った。母親は「ずっと微熱が続き、腹痛があり、集中できない。『思うとおりに過ごしたい日々が過ごせない』と泣いている」と明かした。他人の視線が怖く1人で外出できず、家の中でも恐怖が続いているという。

 事件前はUSJが好きだったが、寺内被告の実家が大阪と知り、強い口調で「絶対行かない」と話すようになった。監禁されていた千葉、中野の地名にも、拒否反応が出るという。

 母親は「娘が社会復帰できる日が本当に来るのか。本当に1人で外出できるようになるのか。家族以外の人間を信用できるようになる日が本当に来るのか」と泣きながら語った。寺内被告に対し「2年がどんなにつらくて長くて、悲しかったか。今後2度と娘の前に現れないで」とした上で「一生刑務所から出さないでほしい」と厳罰を望んだ。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161103-01732996-nksports-soci


朝霞少女監禁の寺内被告「現実感ない」まるで人ごと

日刊スポーツ 11/3(木) 10:07配信


 埼玉県朝霞市で中学生だった少女(15)が誘拐され2年ぶりに保護された事件で、未成年者誘拐と監禁致傷などの罪に問われた寺内樺風(かぶ)被告(24)の第2回公判が2日、さいたま地裁(松原里美裁判長)で開かれ、寺内被告が、被害者に謝罪の言葉を口にした。ただ、事件については「残念ながら」「結果的に事件を起こした」などと人ごとのような供述を繰り返した。被害者の母が証人尋問に出廷し「一生刑務所から出さないでほしい」と訴えた。

 寺内被告は黒いスーツ姿で、薄ら笑いを浮かべて入廷した。被害者の母親を囲むパーテーションを眺め、首をかしげたり、眉をひそめたり。弁護側の被告人質問に雄弁に答え続けた。

 最後に弁護人から促されてようやく、座ったまま回転椅子をクルリとパーテーションの方に向けて「まったく行う必要のなかった行為を、私の身勝手な理由で起こしてしまって、本当に申し訳なく思っています」と上体を倒してみせた。

 弁護側の被告人質問では、解説者のような口調で語った。中3でいじめに遭い、クラス全体から疎外されているように感じたと説明。いじめの加害者が処分されず「表面化しなければ何をしてもいいと考えるようになった」と話した。事件を起こした理由を「社会性を培う機会がなく人の気持ちを理解する力が退化し、結果的に本事件を起こしたのが経緯」とした。

 検察側は、寺内被告が逮捕後の調べで少女を「被験者」と呼んでいたと指摘。その理由を被告は「人間ではなく動物というか、生物と接しているような感覚だった」などと説明した。

 被害者の家族が心配する気持ちについては「よく分からないですね」と供述。弁護人は逮捕後、寺内被告が自分の性格分析を記したメモを取り上げ「三人称の視点で生きている」との記述について質問。同被告は「自分の目で物を見ても、その出来事がパソコン動画のように現実感がない」と説明。

 検察側は、被害者側からの損害賠償命令についても質問。寺内被告は「できる限り払っていく」としたが、現在の貯金20万円については「携帯代の支払いに使う」とした。

 弁護側証人尋問で出廷した寺内被告の父親は「(逮捕後の診察で)精神疾患を患っている可能性があると聞いた」と証言。弁護人に促されて突然涙声になり、被害者側に向かって「申し訳ありません」と謝罪した。一方、検察側は父親も損害賠償の申し出をしていないことを指摘。弁済ができない被告への援助の意向も質問したが、父親は「考えていない」とした。

 次回公判は、寺内被告の精神鑑定が行われた後で開かれる。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161103-01732995-nksports-soci

樺風が「精神疾患を患っている可能性」という父親の「証言」。表現が〈馬から落馬〉に近いということはさておき、事実陳述的な準位においては殆ど無意味だし、事実でさえないだろう。精神科医が「精神疾患」なんて超一般的なことをいう筈はないだろう。内科医が患者に向かって、あんた身体悪いよなんていう筈がないのと同じで、もっと具体的に、どんな「疾患」なのかをいう筈じゃないか。統合失調症とか鬱病とか。記事を読む限り、多くの人が離人症解離性障害)を想起する人は少なくないのではないかと思う。ただし、離人症が犯罪という積極的行為を主体に命令する力があるということは聞いたことがないのだ。その一方で、この拉致・監禁事件は、寺内樺風にとっては、〈善意の行い〉だった可能性もある。寺内は弁護人の質問に次のように答えていたのだった;

――なぜ、人を誘拐して観察する考えがあるのか。

 「中学、高校は競争社会。競争のない、何もしなくていい状況に人を置けば、人助けになるんじゃないかと思いました」
(「被告、少女誘拐「人助けになると思った」 埼玉監禁公判」http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161102-00000107-asahi-soci

つまり、身勝手でありがた迷惑な〈善意〉が寺内樺風に犯罪を命じていた可能性がある。
離人症については、


解離性障害https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A7%A3%E9%9B%A2%E6%80%A7%E9%9A%9C%E5%AE%B3
“Dissociative disorder” https://en.wikipedia.org/wiki/Dissociative_disorder
「現実感がない「離人症状」とは何か―世界が遠い,薄っぺらい,生きている心地がしない原因」http://susumu-akashi.com/2015/09/depersonalization/
だてめがねちゃん「本当に起こる「私は誰...?」精神障害のひとつ、離人症を今知っておきたい」http://matome.naver.jp/odai/2140109954051680201
comcomm「全てが他人事のように感じてしまう...精神障害の一つ離人症とは」http://matome.naver.jp/odai/2139355195978225201


を取り敢えずマークしておく。また、木村敏先生*2 の『時間と自己』或いは『自分ということ』。木村離人症論については、例えば、


木村敏 「時間と自己」(中公新書)1/2」http://d.hatena.ne.jp/oshimayukinori/20140306/1394064376
信時哲郎「共通感覚の文学 「心象スケッチ」の言葉がめざしたこと」http://www.konan-wu.ac.jp/~nobutoki/papers/sensuscommunis.html
離人症症状を象徴する3つの現象」http://media.accel-brain.com/parsonalization-of-deparsonalization/
木村敏さん」http://blog.goo.ne.jp/meiko-matsuyama-rnbb/e/a66ebbef49bb1764e81539ebc67839e3


など。

時間と自己 (中公新書 (674))

時間と自己 (中公新書 (674))