出雲の危機

『読売新聞』の記事;


出雲大社「庁舎」解体中止を…初の危機遺産警告
2016年09月15日 15時21分


 国連教育・科学・文化機関(ユネスコ)の諮問機関・国際記念物遺跡会議(イコモス)の20世紀遺産国際学術委員会が、島根県出雲市出雲大社が進める境内の施設「庁舎」の解体計画について、「危機遺産警告」を出したことがわかった。

 出雲大社に計画の中止と修繕・保存を検討するよう、9日付の文書で求めた。国内の文化遺産で、同警告は初めて。

 庁舎は1963年、建築家の菊竹清訓氏(1928〜2011年)が設計して建てられたコンクリート造り一部2階建て(延べ631平方メートル)。これまで宝物の展示や、参拝者の受付窓口などで使われてきた。

 建設当時の最先端の建築技術を駆使し、コンクリート造りながら、出雲地方で稲を干す「稲はで」をイメージさせるデザインで、伝統的木造社殿が立つ出雲大社境内で周囲と調和。63年に日本建築学会賞を受賞するなど国内外で高く評価された。2003年には日本建築学会などの「日本の重要な近代建築100選」に選ばれた。

 20世紀遺産国際学術委員会は、国際的に活躍している建築家らで構成。出雲大社が老朽化を理由に解体と建て替えを計画したのに対し、「庁舎はほかの美しい伝統的神社建築の優れた引き立て役になっている」「歴史的重要性だけでなく、建築的、芸術的な価値の高さも疑いの余地はないが、まだ十分な記録と考証が行われているとはいえない」などと反対している。

 同委の日本代表委員で、東京理科大の山名善之教授(建築意匠・建築史)は、読売新聞の取材に対し、「庁舎の文化遺産としての価値を出雲大社に認識してもらい、将来にわたって建物が受け継がれるよう、新たに方策を講じてもらいたい」としている。

 出雲大社の川谷誠一総務部長は「コメントすることはない」と話した。


 出雲大社は今年3月、庁舎の建て替えについて、16〜18年度の「平成の大遷宮第2期事業」で、別の重要文化財建築の修繕などと合わせて実施する計画を決めた。

 大遷宮を支援する氏子や経済団体でつくる「御遷宮奉賛会」(会長=米倉弘昌・元経団連会長)の関係者によると、決定の際、出雲大社側から、庁舎は完成から約50年たち、雨漏りやひび割れ、鉄筋の露出で参拝者の安全が確保できない状態と報告があった。

 その際、「多くの人の寄付で建設されたことや建築物の価値を尊重し、繰り返し改修に努めたが、今後も継続して使うことは不可能と判断した」という旨の説明があったという。計画では、現在の庁舎の位置に新築する。

 庁舎を巡っては今年3月、日本建築学会などが保存を求める要望書を出雲大社に提出したが、出雲大社側はコメントしていない。

 出雲市は、今年度一般会計補正予算案に、庁舎の建て替えに伴う埋蔵文化財の調査費1930万円を盛り込み、開会中の市議会9月定例会に提出した。調査は4か月程度を見込んでいるが、出雲大社側から計画が提出されておらず、解体や調査開始時期は未定という。(佐藤祐理、高田史朗)
http://www.yomiuri.co.jp/culture/20160915-OYT1T50007.html

菊竹清訓*1がデザインした建物というと、例えば両国の「江戸東京博物館*2。この出雲大社「庁舎」も、やはり江戸東京博物館その他の菊竹作品と共通する雰囲気を持っているな、と感じた。
建築の場合、しばしば争点が解体(新築)か保存かということになる。例えば、東京銀座の「中銀カプセルタワー」(黒川紀章*3。しかし、同じデザインでそっくりそのまま建て直すという選択肢があるのではないか。


出雲大社については、http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080729/1217311769 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080828/1219924130 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080909/1220936285 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20081127/1227759062も。