安丸良夫

朝日新聞』の記事;


歴史学者安丸良夫さん死去 斬新な民衆運動論を展開

2016年4月4日15時25分

 日本近世史・近代史、宗教思想史の研究に大きな足跡を残した一橋大名誉教授の安丸良夫(やすまる・よしお)さんが4日午前、東京都内の病院で死去した。81歳だった。

 富山県生まれ。京都大卒業後、名城大助教授などを経て一橋大教授。定年後は早稲田大で教えた。中世史の網野善彦氏や西洋史阿部謹也氏らと並び、戦後の日本の歴史学界をリードした研究者の一人で、幕末の世直し一揆自由民権運動などを検討し、斬新な民衆運動論を展開した。

 近代日本の形成論や、社会史的な研究の評価、歴史学研究史の再検討など、広範な業績を残し、宗教学や社会学にも影響を与えた。「安丸良夫集」(全6巻、岩波書店)ほか多数の著書がある。
http://www.asahi.com/articles/ASJ3T6DKTJ3TUCLV00Q.html

毎日新聞』の記事;

訃報
安丸良夫さん81歳=日本思想史研究者

毎日新聞2016年4月4日 18時35分(最終更新 4月4日 18時35分)


 近世から近代の民衆思想研究などで知られる日本思想史研究者、安丸良夫(やすまる・よしお)一橋大名誉教授が4日、死去した。81歳。葬儀は近親者で行い、後日、しのぶ会を開く。喪主は妻弥生(やよい)さん。

 富山県出身。京都大大学院博士課程修了。名城大助教授、一橋大助教授などを経て1977年同大学教授。早稲田大客員教授なども務めた。2月に交通事故に遭い、入院中だった。

 民衆の神社信仰などが、明治維新を経て国家神道へと大きく作り替えられ、組織化された過程などを論じた。また、明治維新前後の一揆新興宗教が民衆意識をいかに反映していたかなどを考察。激動期の一般民衆の思考を描き出して、幅広く思想や歴史の研究者に影響を与えた。天皇制の本質を追究する「天皇と王権を考える」(岩波書店)シリーズの編集委員なども務めた。

 主な著書に「日本の近代化と民衆思想」「神々の明治維新」「出口なお」「近代天皇像の形成」など。
http://mainichi.jp/articles/20160405/k00/00m/060/011000c

日本の近代化と民衆思想 (平凡社ライブラリー)

日本の近代化と民衆思想 (平凡社ライブラリー)

神々の明治維新―神仏分離と廃仏毀釈 (岩波新書 黄版 103)

神々の明治維新―神仏分離と廃仏毀釈 (岩波新書 黄版 103)

出口なお (朝日選書)

出口なお (朝日選書)

近代天皇像の形成 (岩波現代文庫)

近代天皇像の形成 (岩波現代文庫)

朝日の記事にあるように、安丸先生*1阿部謹也網野善彦という名前を並べて考えたことはなかった。しかし、1960年代にブレイクしたこの3人の歴史家を(かなり乱暴ではあるけど)〈社会史的転換〉或いは〈心性史的転換〉の先駆者として括るのはそう外れたことでもないとは思う。また、色川大吉という名前をこれに加えるべきかも知れない。『日本の近代化と民衆思想』で展開されたのは「通俗道徳」論であり、近世後期から近代にかけての日本民衆の生の道標となってきた、新宗教の教義を初めとする倫理観が「通俗道徳」として社会思想史的に位置づけられたわけだ。これはさらに一般化すると、モラル・エコノミーということになるだろう。つまり道理観。勿論「通俗道徳」は今も、新しい意匠を採ったり新しい要素を付け加えたりしながら存続し続けている。そうした自己更新していく「通俗道徳」を無批判的に浴びてしまうのでもなく、上から目線で切り捨てるのでもなく、丁寧に歴史的・社会的な位置づけを行い、内在しつつ脱構築する可能性を探ること。これは安丸以後の皆に課せられた課題であろう。
。『日本の近代化と民衆思想』の概要については、取り敢えず以下のエントリーをマークしておく;


安丸良夫『日本の近代化と民衆思想』」http://d.hatena.ne.jp/Talpidae/20090312/p1