指を噛む(ドン・デリーロ)

コズモポリス (新潮文庫)

コズモポリス (新潮文庫)

ドン・デリーロ*1コズモポリス』(上岡伸雄訳)に指を噛むシーンがあった。


*2は腰を下ろし、チン*3を見つめた。チンは親指の爪に接する死んだ皮膚を噛んでいる。彼はチンがかじるのを見た。これは、チンがいつも抱いているような穏やかな幻想とは違う。彼はかじっている。歯をささくれ*4に食い込ませている。それから爪自体、爪の根元に。三日月形の白い弧となった部分、爪の半月。この光景には何か無気味なもの、先祖返り的なものがある。胎児のチン、薄い粘膜に包まれ、丸くなっているチン。恐ろしく歪んだ頭をもつ原人が、指の発達していない手をしゃぶっている。
なぜささくれ*5はささくれ*6と呼ばれるのだろう? これは中期英語アグネイルの変形。エリックはたまたまそれを知っていた。この言葉は苦悩や苦痛を意味する古英語に由来する*7。(pp.58-59)
ところで、「チン」は次のパラグラフで「菜食主義者特有の屁をひった」(p.59)。どんな屁?

*1:Mentioned in http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080915/1221410828 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100618/1276880747

*2:主人公「エリック・パッカー」。

*3:フル・ネームは「マイケル・チン」。エリック・パッカーの「通貨アナリスト」(p.35)。

*4:「ハングネイル」というルビ。hangnail

*5:「ハングネイル」

*6:「ハングネイル」

*7:See eg. http://www.etymonline.com/index.php?term=hangnail