承前*1
- 作者: 川本三郎
- 出版社/メーカー: 阪急コミュニケーションズ
- 発売日: 1986/12
- メディア: 単行本
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引き続き川本三郎『'80年代都市のキーワード』から。
「シングル セリバシイの優雅な生活」(初出は1982年)に曰く、
川本はまた、
博報堂で出している社内紙『生活新聞』の四月一六日号が「アンマリくん」という面白い特集をしている。「アンマリくん」は聞き慣れない言葉だが、unmarriedをもじった新造語。最近、急速に増えつつある未婚族のことだという。以前はベビーブーム世代の女性に”結婚しない女”が増えたのが目立ったが、最近では男性のあいだでも「アンマリくん」が増えているのだそうだ。
独身族、一人暮し族の増加。これはウォークマン、パソコンに象徴されるミーイズムの時代にふさわしい。遊ぶのも一人なら生活するのも一人と「一人の空間」が拡大されているのだ。
しかも以前は一人暮しというと、四畳半・即席ラーメン・ゴロ寝とわびしいイメージが強かったが、『生活新聞』によれば現代は1DKマンション・男の料理・旅行(レジャー)とシングルライフを満喫しているようである。(p.83)
とも書いている。
実際、高度に発達した消費社会では、”家庭ごっこ”より面白い”一人遊び”がたくさんあり過ぎるのだ。ウォークマン、パソコン、釣り、酒、オートバイ、カルチャーセンター。これではとても結婚なんてしている暇はないし、家庭に縛られているのも損した気分になる。(p.85)
「草食」*2とは最近の流行語だけれど、30年前に既にそうしたことは言われていたわけだ。最近の若い衆を「草食」云々とdisっている年長者自身も若い頃は「アンマリくん」と言われていたかも知れないわけだ。
ところで、これだけでなくこの本を通じて「ミーイズム」というのが一種のマジック・タームとして機能している。これは当時、川本氏に限らず、団塊前後の生まれで英語ができて・或る程度英語圏の情報に通じている論者が社会批判をするときの常套句のひとつだったような気もする(要実証)。
また、或る世代以上の人々にとっての「ウォークマン」の衝撃というのも調べるに値する文化史的事実なのでは? 細川周平氏は『ウォークマンの修辞学』を書いたし。文脈はずれるが、レイ・チョウが『ディアスポラの知識人』の中で中国社会における「ウォークマン」普及の意味について考察していたことを思い出した。
ウォークマンの修辞学 (1981年) (エピステーメー叢書)
- 作者: 細川周平
- 出版社/メーカー: 朝日出版社
- 発売日: 1981/07
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- 作者: レイチョウ,Rey Chow,本橋哲也
- 出版社/メーカー: 青土社
- 発売日: 1998/03
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*1:http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20120103/1325553840
*2:See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090805/1249485120 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090817/1250534473 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20091215/1260847016 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20091228/1261942323 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20101027/1288178012 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20111211/1323590018