満洲族と犬(メモ)

天怪地奇の中国

天怪地奇の中国

中国国内に居住する民族で犬食を禁忌とする民族には瑶族があるが*1満洲族もそうであった。清朝の開祖、ヌルハチが犬に生命を救われたという伝説がある。西村康彦『天怪地奇の中国』*2から;


(前略)単騎敗走の途中、疲れ切って草原の中で眠ってしまった奴児哈赤に敵兵が迫り火を放つ。草原をなめるように燃えひろがる火に気付いた犬は、走って河辺を往復しては主人の四周の草を濡らして救い、やがてみずからは精魂つきて焼死する。目覚めた奴児哈赤は焼野原と濡れた草、犬の死体から事情を察し「今後、子孫万代にわたり永遠に犬肉を食わず、犬皮も身につけまい」と誓う。(p.212)
瑶族における禁忌はその起源神話に由来するが、『南総里見八犬伝*3の元ネタにもなった瑶族の起源神話については、王明珂『英雄祖先與弟兄民族』*4pp.165-168、また白川静『中国の神話』を取り敢えずは参照のこと。
中国の神話 (中公文庫BIBLIO)

中国の神話 (中公文庫BIBLIO)