中国における鳥居龍蔵など

石井光太『物乞う仏陀*1ラオスのモン族(苗族)*2障碍者のことを採り上げている(p.70ff.)。その中で、「中越戦争*3の頃、モン族の一部が「中国のスパイ」とされて「強制移住」させられたということを知る(p.72)。

物乞う仏陀 (文春文庫)

物乞う仏陀 (文春文庫)

さて、葛兆光*4「借紙遁窺牗(六)」(『書城』2012年2月号、pp.34-39)を読む。葛氏はこの中で、李漢林『百苗図校釈』(貴州民族出版社、2001)という本を採り上げている。これは清時代の苗族の風俗を描いた『百苗図』の注釈本。英語による『百苗図』の研究書としては、Nicholas Tapp*5 & Don Cohn*6 (ed.) The Tribal Peoples of Southwest China: Chinese Views of the Other Within(Bangkok, White Lotus Press, 2003)*7があるという。さらに葛氏は黄才貴編『影印在老照片上的文化――鳥居龍蔵博士的貴州人類学研究』(貴州民族出版社、2000)を採り上げ、この本の資料の多くは出典不明であり、「学術規範」に符合していないが、資料の収集だけは「頗豊」であるとしている。鳥居龍蔵*8の『苗族基本調査』の中国語訳は1936年に商務印書館から刊行されている(国立編訳館訳)。葛氏によれば、鳥居のこの調査報告の中国における影響は大きく、それに反応したテクストとして、


楊漢先(苗族)「苗族述略」(1937)(後に、貴州省民族研究所編『民国年間苗族論文集』[民族研究参考資料第20集]、1983、pp.132-142に再録)
江応梁「評鳥居龍蔵之《苗族基本調査》」『現代史学』、1937
岑家梧「嵩明花苗調査」『西南辺疆』8、1940


を挙げている。