多木浩二

これは既に新聞ではなく旧聞。
4月に亡くなられたということだが、全然知らなかった。
取り敢えず『朝日』の記事;


美術評論家多木浩二さん死去 82歳

2011年4月14日18時41分



 写真や建築から戦争まで、幅広く論じた美術評論家多木浩二(たき・こうじ)さんが、13日午後、肺炎のため神奈川県平塚市の病院で死去した。82歳だった。葬儀は行わない。喪主は妻晏代(やすよ)さん。

 神戸市出身で、東京大美学美術史学科で学ぶ。芸術や社会事象を哲学的に論じた。著書は「生きられた家」「建築・夢の軌跡」「ヌード写真」「スポーツを考える」「戦争論」「天皇の肖像」など多数。芸術選奨文部大臣賞を受け、千葉大教授などを務めた。
http://www.asahi.com/obituaries/update/0414/TKY201104140288.html

多木浩二*1の知的関心というのは多岐に渉っていたのだが、乱暴に要約してしまえば、〈視線〉と〈表象〉ということになるのだろう。今手許にある著書としては『生きられた家』と『20世紀の精神』しかないのだが、上の記事で言及されている著作のほかに、都市論としての『都市の政治学』はマークしておくべきだろう。2007年に『肖像写真』というのも岩波新書から出ていたのね。知らなかった。orz
生きられた家―経験と象徴 (岩波現代文庫―学術)

生きられた家―経験と象徴 (岩波現代文庫―学術)

20世紀の精神―書物の伝えるもの (平凡社新書)

20世紀の精神―書物の伝えるもの (平凡社新書)

ヌード写真 (岩波新書)

ヌード写真 (岩波新書)

スポーツを考える―身体・資本・ナショナリズム (ちくま新書)

スポーツを考える―身体・資本・ナショナリズム (ちくま新書)

戦争論 (岩波新書)

戦争論 (岩波新書)

天皇の肖像 (岩波新書)

天皇の肖像 (岩波新書)

都市の政治学 (岩波新書 新赤版 (366))

都市の政治学 (岩波新書 新赤版 (366))

最初に多木さんの文章を読んだのは大学に入って間もない頃で、『朝日ジャーナル』に掲載された、The Whole Earth Catalog*2をネタにして、フーコーの『言葉と物』などを援用しつつ、世界認識のあり方のひとつとしての「カタログ」の可能性を論じたものだった。当時は『ぴあ』*3等の所謂〈カタログ雑誌〉が大人の文化人の批判の対象となっていて、多木さんの論攷は「カタログ」という知のスタイルの対抗文化的な可能性を擁護したものだったと思う。
言葉と物―人文科学の考古学

言葉と物―人文科学の考古学


天皇の肖像』と(ほぼ同時期に『天皇の肖像』以上の世俗的評判となった)猪瀬直樹の『ミカドの肖像』とを読み比べると、知の質の差異というものを体感できるのではないだろうか。
ミカドの肖像〈上〉 (新潮文庫)

ミカドの肖像〈上〉 (新潮文庫)

ミカドの肖像〈下〉 (新潮文庫)

ミカドの肖像〈下〉 (新潮文庫)

梅本洋一多木浩二追悼」http://www.nobodymag.com/journal/archives/2011/0508_0029.php
彦坂尚嘉「美術評論家多木浩二さん死去 82歳(加筆1)」http://hikosaka5.blog.so-net.ne.jp/2011-04-23-1
多木浩二さん死去 82歳」http://d.hatena.ne.jp/heliograph/20110414/1302797288