寺脇を弁護して

http://d.hatena.ne.jp/HALTAN/20101208/p12ちゃんねるからの引用があって、寺脇研*1がdisられていた;


478 :名無シネマさん:2010/12/07(火) 10:40:10

山中を知らない、黒澤映画のうち見たことない作品が何本もあるというライターはゴロゴロいるよ。

オタク系特撮映画ライターとか。

邦画の話じゃないが、寺脇研は、欧米は古典的名作すら見ていない。

「カラブランカ」だって5年ほど前に初めて見たという話だ。

ゴダールトリュフォーヒッチコックもスコセッシも見たことがないんだろう。

おいおい「カラブランカ」じゃなくて『カサブランカ*2だろうという突っ込みはさて措くけど。寺脇さんはそもそも日本映画一本でやってきた人で、所謂洋画について書いているのを読んだことはない。彼からすれば、ピンク映画や自主映画も含めて日本映画を観まくっていれば洋画を観ている暇はないよということになるのだろう。だから、「欧米は古典的名作すら見ていない」と批判したつもりになっても、本人からそれが何か? と言われて終わりなのではないか。
カサブランカ CCP-013 [DVD]

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ただ若い連中で映画を観ていない、「クロサワ」も知らないというのは、徹底的に馬鹿にしていいのだろうと思う。寧ろ積極的にそうすべきなのだろう。というのも、1970年代や80年代の映画を享受する環境というのは今と比べてそれは酷いものだったのだ。昔は名画座というのがあって良質な映画を安く観ることができたという人もいる。勿論、俺も銀座の並木座とかにはお世話になったけど、それは東京、そして大阪や京都などの大都市に限った話。東京にはアテネ・フランセもあったのだが。田舎では映画館そのものもつぶれて久しいという状況だった。寧ろその後のVHSやDVDの普及によって、映画を享受する上での地域格差が縮小されたのではないか。ヴィデオ屋がない時代、映画館がない場所に住んでいる人はTVで映画を観るしかなかったわけだけど、1970年代にはノー・カット/字幕スーパーの映画というのはTVでは殆ど観ることができなかった。そういうのは、NHK教育で時たまやるくらいだった。民放では、1980年代にフジが深夜枠で始めた「ミッドナイト・アートシアター」が最初だったと思う。しかし、今はNHKのBS2ではノー・カット/字幕スーパーの映画を、時間帯をずらして、毎日何本も流している。DVDにせよTVにせよ、映画を観るためにははるかに都合のいい環境があるといえる。また、昔は日本未公開の映画も多かったわけだが、今ならAmazonで輸入物のDVDを入手することも容易いだろうけど、70年代ではそうはいかない。だから、坪内祐三氏も

(前略)映画でも、僕が大学3年か4年ぐらいのときにようやく家庭用ビデオが普及してきたけど、まだ高くて買えない。しかもソフトの数は少ないし、いわゆる古典的名画、例えば50年代60年代のヒッチコックの映画なんか名画座やシネマライクでも上映されることはなかった。だから『めまい』とか『裏窓』がすごいと蓮實(重彦)さんとかが言ってても、実際には観ることができないから、晶文社が出した『映画術 ヒッチコックトリュフォー』(1981)っていうデカイ本を読んで、妄想を膨らまして観た気になる(笑)。いまはヒッチコックなんて序の口で、なんでもDVDで手に入るでしょう? 小津安二郎なんか、残されてる作品がぜんぶDVDになって、次は成瀬(巳喜男)で今度は溝口(健二)だ、みたいな。昔だったら、「小津が好き」とか言っても、5本以上観るにはそれなりに手間暇かけないといけなかったんだよね。(『WB』2006年11月号*3、p.23)
と言っている。俺もそういう時代に育ったせいか、映画などに関しては、批評文や紹介文を読んで、内容を妄想的に想像する能力はけっこうあるんじゃないかとも思ってはいる。