既に漏らしている!

http://d.hatena.ne.jp/apesnotmonkeys/20101012/p1


渡部昇一*1ロッキード事件を巡る田中角栄に対する裁判を批判した「「角栄裁判」は東京裁判以上の暗黒裁判だ!」(『諸君!』1984年1月号)が引用されている。それによれば、渡部は


 最後にわれわれの中で、外国の報道機関、外国人の物書き、外国人の法律学者などなど、法律に接触する人々に、次のことを決して漏らしてはならない。

田中角栄被告は、ただの一度も最重要証人に反対尋問する機会を与えられることなく有罪を宣せられたのである」

 それを聞いた文明国の人は、百人が百人、千人が千人、万人が万人、一人残らず日本はそんな野蛮国であったのか、と仰天することであろう。われわれはそんな国の恥を世界の目にさらすことはないのである。

と書いている。
渡部の論の是非に関しては、上に掲げたエントリーを参照していただくとして、これから書くことはとてもくだらないことだ。渡部昇一は『諸君!』を「外国人」は読まないと思っていたのかね。いくら「外国人」に「漏らしてはならない」と言っても、日本で合法的に、それも文藝春秋というけっしてマイナーではない出版社の雑誌に書いた以上、「外国人」も読んでいた筈なのだ。『諸君!』の日本国外持ち出しが禁止されていたという事実はないわけだし。1980年代当時、『正論』の影は薄く、〈右〉の雑誌といえば『諸君!』だったのだ。もしかしたら、日本語で書いてあるのでガイジンにはわかるわけがないと思っていたのかも知れない。たしかに、当時はデイヴ・スペクターのデビュー以前ではあるけど。しかしながら、当時朝鮮半島や台湾には日帝時代の教育を受けた人、つまり日本人と同レヴェルで日本語を解する人が今よりも多く生きていたわけだけれど。