土耳古、そして蟋蟀

日々の非常口 (新潮文庫)

日々の非常口 (新潮文庫)

アーサー・ビナード「七面どうな話」in『日々の非常口』*1、pp.204-205


曰く、


英語では「トルコ」のことをTurkeyといい、「七面鳥」も同じ。同一の単語だ。ヨーロッパ人はかつて、ホロホロ鳥をトルコの領地から輸入し、アフリカの草原に棲む鳥なのにTurkey-cockと名づけて食べていた。また、ポルトガルの商人が西アフリカのギニアから、同じホロホロ鳥を出荷していたので、Guinea-fowlと別名もついた。
十六世紀になって、今度は北米原産の七面鳥がヨーロッパへ運ばれ、まったく違う鳥にもかかわらずTurkey-cockと呼ばれた。そのうち、商品名を使い分けようと、ホロホロ鳥がGuinea-fowlに、七面鳥がTurkeyに決まり、後者はturkeyに縮まった。(pp.204-205)
また、

(前略)昆虫少年のぼくはミシガンの原っぱでよくcricketたちと遊んだが、十歳くらいのときに、英国ではみんなcricketというスポーツに興じていると聞きかじり、「跳びはねたりするからコオロギ競技か」と思った。大学に入って、同じ寮にいたイギリス人の留学生にcricketの同音異義について聞いてみたら、彼は「cricketといったらスポーツだな。虫とは関係ないだろ?」と。
昆虫のcricketの語源は、擬声語らしい。雄の鳴き声の「クリケクリケ」から。スポーツのほうは「語源不詳」となっているが、一説によれば、バットで玉を打つ音がコオロギの声に似ているからだという。(p.205)
蟋蟀/cricketについては、http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20061102/1162437941で疑問を呈したことがある。