猫の死

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妻なき後のアラーキー支えた愛猫死ぬ

2010.3.6 00:00


世界的な写真家、「アラーキー」こと荒木経惟(のぶよし)さん(69)の愛猫チロが息を引き取った。享年22のメス。大切に育てられ、人間にたとえると100歳を超す長寿だった。早世した妻のかわりとなって一人暮らしの荒木さんを精神的に支える一方、数々の作品にも登場した美人猫で、ファンの間で知らぬ者はいない存在。荒木さんは「あんなにオレを愛してくれた女はいない」と感謝の思いを語った。(重松明子)

 チロが死んだのは2日。3日のひな祭りに荼毘(だび)に付された。棺おけを桃の花で飾り見送った荒木さんは「焼いちゃって、骨の写真を撮って、ふんぎりついた」と自分に言い聞かせるようにつぶやく。「家でちょっと目を離している間に静かに逝って。長い間オレだけのために生きてくれて、ありがとう」

 昭和63年。妻・陽子さんがもらってきた子猫に、ネコ嫌いだった荒木さんはたちまち魅了された。2年後に写真集「愛しのチロ」(平凡社)を出版する。しかし、この本の制作と並行するように陽子さんの体をがんがむしばんでいった。

 平成2年1月、陽子さんは42歳の若さで逝去。心待ちにしていた写真集は翌2月に発行された。「一緒に泣いて、寄り添って、励ましてくれたのがチロ。本当は人間の女じゃないか…って感じるくらい繊細で、焼きもちもよく焼かれたな」と荒木さん。

 活発なチロは屋外で多数のヤモリを仕留めて荒木さんにプレゼント。そのヤモリのミイラは、花を撮影する際に「エロス(生・性)とタナトス(死)」の対照を際立たせる、荒木作品に欠かせない小道具となった。つい最近まで元気いっぱいだったが、2月25日に体調が急変。腎不全を起こしていた。
http://sankei.jp.msn.com/region/kanto/tokyo/100306/tky1003060000000-n1.htm

 28日、入院先から自宅に連れ戻した際、カメラを向けた荒木さんにチロは最後の命を燃やすように応えた。「シャッター音に反応して、クッとこっち見て立ち上がろうとすんだよ。目に涙ためて…最後までオレに真剣勝負で付き合ってくれた」と荒木さん。

 ここ数日の一番の変化は、朝起きるとひざに飛び乗ってくるチロの毛をブラッシングする日課が途絶えたことだという。「今朝も、あれ?いないって思った。だけどペットロスなんかならないよ。また天国で会えるし、それまで元気でいないと怒られちゃうから」。荒木さんは悲しみを振り切るように、無理して笑った。
http://sankei.jp.msn.com/region/kanto/tokyo/100306/tky1003060000000-n2.htm 

さて竹中直人監督の『東京日和』に猫は出て来たかなと思う。勿論、この映画で描かれた「島津」(竹中直人)と「ヨーコ」(中山美穂)というカップルは現実の荒木夫妻とは全く別のキャラクターなのだが。そういえば、この映画を観ていて誰でも思うことのひとつは、荒木経惟ほどJRの制服が似合う男はそういないということだろう。
東京日和 [DVD]

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See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060610/1149962157 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060927/1159328407 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080623/1214195486 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20081124/1227487885