革新(戦前と戦後)

http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100131/1264951293


「戦後日本に特殊的な意味での保守というのは(対となる)革新抜きには意味をなさず、その保守−革新というペアも(小沢一郎が仕掛けたとされる)細川連立政権の成立とともに無意味となった」と書いた。戦後、「革新」は左翼と結びつけられてきた(新左翼の場合、俺たちは「革新」派じゃなくて革命派だと主張していたということはあるかも知れないが)。しかし、戦前は、二・二六事件青年将校が「革新将校」を自称したり、岸信介らが「革新官僚」と呼ばれたりして、「革新」という言葉は寧ろ右の方と相性がよかった。戦後の何時頃に保守−革新というペアが使われ始めたのか正確には知らないが、1960年代前半には定着していたといえるだろう。「保守」の意味が変化するのは1980年代か。東欧や中国などの社会主義国市場経済化や自由化を推進する立場の人たち、それまでは右派と呼ばれただろう人たちが改革派と呼ばれ、計画経済に固執する、それまでは左派と呼ばれただろう人たちが保守派と呼ばれた(英語圏では、hard-linersと呼ばれることが多かったか)。それは、勿論ポスト文革中国共産党が「改革開放」路線を標榜したこととも関係あるだろう。また、小泉純一郎を初めとする新自由主義者に改革という言葉を好む人が多いのもこれと関係あるか。1980年代から米国が日本に要求している〈構造改革(structural reform)〉の影響が強いのだろうけど。さて、21世紀に入って、「保守」という言葉の意味は、冷戦時代、55年体制の時代に戻ってしまった感もある。但し、それと対立してペアをなす筈の「革新」はどっかに行ってしまったけれど。
津村喬が昔『革新自治体』という解説本を書いていた。

革新自治体 (1978年) (入門新書―時事問題解説〈no.36〉)

革新自治体 (1978年) (入門新書―時事問題解説〈no.36〉)