Stefan Theil “Europe’s Right Turns Left” Newsweek October 12 2009, pp.42-45
日本の自民党とは対照的に、日本よりも1か月遅れの独逸の総選挙ではAngela Merkel率いる基督教民主党(CDU)が大勝した。独逸だけではなく、ここ数年間にヨーロッパの主要国では何処でも中道右派或いは右派政党が政権を奪還してしまった。仏蘭西も伊太利も和蘭も丁抹も瑞典も。現在社民政党が政権に就いているのは西班牙と英国くらいである。大恐慌以来の資本主義最悪の危機とも呼ばれる現在、何故ヨーロッパでは右が強いのか。この記事によると、それは中道右派或いは右派が左傾化したからである。”Conservative leaders are not just stealing from the left, they’re also stealing ideas.”(p.43) 独逸で破れた社民党(SDU)のPeer Steinbrick(元財務部長)もCDUの政策を「ぱくり(piracy)」と呼んでいる(p.45)。メルケルを初めとする「新右派(New Light New Right)」――ここで名前が挙げられているのは英国保守党のDavid Cameron、仏蘭西のサルコジ、瑞典のFredrik Reinfeldt――はもう(かつてのサッチャー主義のように)福祉国家を否定したり、市場原理主義によって資本の活動を野放しにしたりすることはしない。経済面だけでなく、ジェンダーやエスニシティに関してもずっとリベラルになっている。
情況に応じて左翼の政策だろうが何だろうがぱくってしまうpragmatism(悪くいえばopportunism)というのはそもそも保守主義の真髄といるのだろうけど、日本の自民党はヨーロッパの中道右派或いは右派政党の逆を行くことによって、大負けしてしまったわけだ。