- 作者: 竹内実
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竹内実『中国という世界』から。
碩学に突っ込みを入れるというのは恐縮なのだが、「輸送の途中で茶の葉が発酵して」紅茶になったというのは俗説*1。紅茶は安徽省祁門にて英国市場の動向を睨みながら独自に開発されたもの*2。但し、中国語と英語で、何故/如何にして「紅」とblackが入れ替わったのかはわからない。
日本にきたポルトガル人の宣教師が堺で、ひとびとが抹茶を飲んでいるのを見て不思議におもい、緑色の飲みものを飲んでいます、と本国に報告した。やがてポルトガルで茶を飲むようになり、茶を買いつけた。明代にはいると抹茶がすたれ、葉茶になっていた。
イギリスに嫁ぐことになったポルトガルの皇女はみやげに茶を持参し、イギリスの宮廷で「ティー」(茶)が流行し、民間にも普及した。輸送の途中で茶の葉が発酵して、「紅茶」(ブラック・ティー)が好まれるようになった。ウィスキーのラベルに描かれている「カティ・サーク」は茶を運んだ快速の帆船である。
茶が飲まれるにつれて、大量の銀が清国に流出し、イギリスは打撃を受けた。期待した工業製品の布地(木棉)はまるで売れなかった。(p.141)
お茶の歴史に関しては、角山栄『茶の世界史』と陳舜臣『茶の話』をマークしておく。『茶の世界史』には日本の茶の世界市場への進出及びその挫折についての記述あり。最初に読んだとき、西洋における茶というのは紅茶だけではないと思ったのだ。
茶の世界史―緑茶の文化と紅茶の社会 (中公新書 (596))
- 作者: 角山栄
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
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- 作者: 陳舜臣
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と書いていたのだが、「ウイスキーをウーロン茶のようにがぶがぶと飲み」という表現について、広東人にとってお茶は普洱茶であって、烏龍茶は〈台湾人の飲み物〉と見なされるのではないかと思った。ただ、Johnnie Toの『黒社会(Election)』に出てくるお茶の作法は潮州人のもので、こちらの方は烏龍茶を飲んでいると考えられる。潮州は広東省といっても、言語的・文化的には福建省である。また、香港には上層=上海人、中流=広東人、下層=潮州人というエスニックな階層構成がかつてあり、当然潮州人からは黒社会に多くの人材が輩出されていた筈なので、香港黒社会ということだと、烏龍茶との結びつきはアリなのかもしれない。
とにかく過剰だ。男たちは葉巻や紙タバコを吸いつづけては、画面が真っ白になるくらいに景気よく煙を吐き(ハリウッドや日本ではもう不可能なくらいにスモーキー)、ウイスキーをウーロン茶のようにがぶがぶと飲み、長い箸で料理をがつがつ食らう。そして香港映画らしく過剰に銃弾を放ち続け、「エレクション」「ザ・ミッション」のときと同様にキメキメな暴力を振るい続ける。
http://d.hatena.ne.jp/FUKAMACHI/20081214
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そういえば、Jonathan Spence先生は、マルコ・ポーロなど、初期の西洋の中国記述においてお茶が全く登場していないことを指摘していた( The Chan’s Great Continent*4)。
The Chan's Great Continent: China in Western Minds (Allen Lane History S.)
- 作者: Jonathan D. Spence
- 出版社/メーカー: Penguin Books Ltd
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